はじめのマイオピニオン - my opinion -
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地下鉄サリン事件の教訓

 30年前の1995年3月20日、都心を走る地下鉄の中で猛毒のサリンが撒かれ、12名の命が奪われ、6,000名を超える負傷者が生じるという大惨事が起きた。麻原彰晃率いるオウム真理教が起こした事件だが、その数年前から殺人事件や拉致への関与など、危険な団体として当局が追っていた。

 地下鉄サリンの前年、長野県松本市でやはりサリンが撒かれ、7名の命が奪われたが、原因がサリンであることの同定が遅れたばかりでなく、近くに住む河野義行さんが誤認逮捕されるなど、警察の捜査が難航した。歴史を変えることはできないが、もしここでオウムの関与が特定でき、サリン製造の事実がつかめていれば、都心の事件はあるいは防げたかも知れない。

 オウム真理教というカルト集団の監視は、それぞれの施設が所在する県警が担当していた。しかしその連携や情報共有が必ずしも十分ではなく、また捜査力が最も強いと言われる警視庁が本格的に動き出したのは、品川の公証人役場事務長が監禁・殺害された事件からであり、地下鉄サリンの直前だった。このことも悔やまれてならない。

 一方、地下鉄サリン事件でいち早く除染作業を行い、被害の拡大を防いだのは、陸上自衛隊化学科部隊である。化学兵器にもなるサリンの除去という経験はなかったものの、日常の訓練を生かして現場での中和剤散布と安全確認を、命懸けで実施した。警察組織にしても自衛隊組織にしても、この時の経験を生かして、想定を超える非常事態にも対応できる能力を、現在までに積み上げてくれている。

 しかしなお懸念されることは、オウム真理教の後継組織が3つあり、それぞれに元教祖を求心力とした活動を活発化していることだ。以前もそうであったが、若い人々の入会や入信が特に増えているらしい。憲法20条に謳う信教の自由は保障されなければならないが、社会秩序を乱すような行為は、厳に取り締まなければならない。

 若い人々には、世の中に絶対というものはなく、広い視野でバランスよく物事を見ること、他人や他のものに自分の全てを委ねないようにすることなどを、繰り返し丁寧に教えて行く必要がある。最近ではSNSによる勧誘も巧妙になり、興味半分でアクセスしていると、いつのまにか団体内部に入り込んでしまったというケースも報告されている。常に危険と隣り合わせにいることを自覚しなければならない。

[ 2025.03.24 ]