先日、来年度本予算がようやく衆議院を通過した。橋本龍太郎政権以来29年ぶりの予算修正があり、年度内成立のぎりぎりまで、日程が迫ってしまった。修正の内容はまず、高校教育無償化について、維新との合意に基づき約6000億円を加えること。もう一つは、いわゆる103万円の壁について国民民主党との合意を模索して、所得制限付きながら160万円まで引き上げたが、合意を得るに至らなかった。しかし与党提案の内容で1兆円ほどの予算修正を行い、交渉継続の可能性を残した。
さらについ最近、高額療養費の自己負担引き上げをめぐり、年に4回目の適用を受けると自己負担が下がるという「多数回該当」での負担増は凍結したものの、この8月からの定率引き上げを実施することに政府はこだわっていた。主に健保財政の悪化を懸念したためだが、これに疑問を呈した立憲民主党や世論の厳しい対応を見て、8月の定率引き上げも政府として断念すると報道された。多分これも予算修正を必要としており、参議院での修正ののち衆議院で議決しなければならない。政府の判断ミスを反省するとともに、国民世論の厳しさを再認識することとなった。
これらの予算修正はいずれも財政の拡大を余儀なくされるものであった。与党としては交渉の過程で、財源確保の考え方や手段について、野党に見解を求める場面もあったが、責任を持って財源に言及する野党は少なかった。ある野党幹部は「財源は政府与党が考えるべきことで、我々が言う必要はない」などと、極めて無責任な発言をする野党幹部もいたくらいだ。
少数与党として安定的な政局運営をしていくためには、もう一度解散して選挙をやり直すか、野党の一部と連立を組むしかない。与党に対する厳しい世論が存在するあいだは、衆議院選挙で与党が多数を回復する保証はない。一方で積極的に連立を申し出る野党も今のところはない。野党として政策実現はしたいけれども、与党としての責任、すなわち財源問題を背負うことは嫌うからである。
野党の人々の中で、いつまでも野党でいたいと言う人々は少ないと思う。いずれは与党としてこの国の政治をリードしたいと思うはずである。だとすれば、今回いきなり連立を組むことに抵抗を感じるとしても、財源問題を蔑ろにせず、責任を持って語る野党として頭角を表し、将来の与党を目指す勢力が現れても不思議ではないし、むしろ現れてほしいと願っている。こういう政治状況だからこそ、今がチャンスであるはずだ。