来年前半のNHK朝ドラは、『風、薫る』に決まった。明治時代に実在した日本初の「トレインドナース(訓練された職業看護師)」大関和(ちか)をモデルにしたドラマである。大関和は栃木県の北部にあった黒羽藩の家老の娘であり、本県出身の人物がモデルになった朝ドラは、これが初めてだ。地元でも少しづつ評判になりつつある。
黒羽藩と言えば、藩校「作新館」が有名であり、ご縁により私どもの作新学院の名前になった。黒羽藩の城主・大関増裕(ますひろ)は、江戸詰めの際、進取の気概と才覚に長け、時の将軍に見立てられて初代海軍奉行となり、部下の勝海舟から、藩校の名前に「作新民」を付けることを勧められた。「新しき民を作る」という漢書『大学』からの引用である。
私どもの作新学院もこの精神を引き継ぎ、「作新民」を建学の精神として現在に至っているが、大関家に所縁のある大関和がモデルとなったことは、学院にとっても大変嬉しいことである。
大関和は一時、家臣の一人と結婚したが、のちに東京に出て家政婦を経験し、さらに病人看護の仕事と出会う。当時の看護の仕事は、病人の世話を付きっきりで行い、病気を移されて命を失うケースも多い、いわゆる賎業(卑しい仕事)と言われていた。和はこれではいけないと、西洋の看護婦(当時)に倣って、訓練され尊敬される職業にすべく、試行錯誤を繰り返したという。日本のナイチンゲールとも称される活躍をした。
大関和の生き方はまさに、「新しき民を作る」に相応しいものであり、黒羽藩・作新館の精神が乗り移ったように感じる。そのドラマに会えるのは1年後になるが、今から楽しみであり、ちょうど創立140周年を迎える作新学院を勇気付ける番組になることは間違いない。