元タレントの中居正広氏と女性社員の間のトラブルに関して、フジテレビ(以下「フジ」と称する)の男性社員が関与したとして、連日フジが広範で執拗なバッシングを受けている。同社の最初の記者会見がクローズドで行われたり、答弁に窮する場面がしばしばあったりで、確かに彼らの危機管理能力や、初動対応の不味さが、事態を大きく、かつ複雑にしたことは否めない。
しかしそもそもこのトラブルを、最初に報道した週刊誌の記事は、本当に正しかったのか。その後この記事は、かなり根幹の部分で修正されたが、そのことを真剣に表で議論されてた形跡がない。他のマスメディアは最初の記事のみによって真偽を自ら確かめることなく、鬼の首を取ったかのように、フジを寄ってたかってバッシングして、溜飲を下げいる風に見えてしまう。
もちろん真実は第三者委員会で解明されるだろうが、影響力の大きいマスメディアやCM出稿をしている各企業、そして何よりも政府や国民を代表する国会の議論も、真実が解明されるまで慎重かつ中立の立場であるべきではないか。当初の不確かな報道をもとに、これだけの「フジはけしからん」の大合唱が起こることは、我が国の悪い慣習とも言える大衆迎合、同調圧力の典型例を示したと言っても、言い過ぎではないだろう。さらにフジと関係性を維持すること、取引をすることが悪だと断じてしまう国民世論も、これと同罪である。
最近の選挙運動においては、SNSの利活用が急速に拡大しているが、誤った記事や意図して流されたフェイクによって、選挙結果に大きな影響がもたらされたことが大きな問題になっている。今回のフジを巡る騒動もこれと類似するケースである。真実=ファクトに基づく冷静な議論が、民主主義を成長させる唯一の道であることを、我々はもう一度、肝に銘じなければならない。