最近メタ(旧Facebook)のザッカーバーグCEOは、これまで行っていた投稿記事の第三者によるファクトチェックをやめると宣言した。代わりにコミュニティノートと呼ばれるユーザーの評価によって、真偽を類推してもらうというが、その実効性や有効性が危ぶまれている。
日本ではSNSにおけるファクトチェックを強化するための取り組みを始めたばかりであり、政府も民間も戸惑いを隠せない。また最近の国内の選挙では、ネット上のフェイクニュースが選挙結果に影響を与えた可能性があるとして、何らかの規制が必要ではないかと、各党が議論を始めたばかりである。
私が担当している、憲法改正国民投票におけるテレビやネット上での勧誘や、意見表明においても、ファクトチェックの必要性や何らかの規制を加えるべきかどうか、議論が続いているところだ。SNSの影響は若年層を中心に日増しに拡大しており、今回のメタの対応は俄かには理解し難い。
ザッカーバーグCEOの意図は、まずトランプ次期大統領との関係修復にあるのかも知れない。4年前の米議会襲撃事件を扇動したとして、トランプ氏のアカウントを一時閉鎖したことが関係悪化につながったと言われている。また実際にファクトチェックをしているうちに、次第に対応が厳しくなって、いわゆる検閲と言われても仕方ない状況になり、「表現の自由」との折り合いがつかなくなったと指摘する向きもある。
我が国には既に日本ファクトチェック・センター(JFC)、NPO法人日本ファクトチェック・イニシアティブ、一般社団法人リトマスという3つのファクトチェックの団体があり、実績を積み上げつつある。アメリカの動静とは切り離した形で、SNSなどのネット上におけるフェイクニュースを、彼らの尽力によりできるだけ排除するとともに、一方では得られた情報が本当に正しいのか間違っているのかを判断する能力を、公教育の中できちんと身につけさせるプログラムが必要な時代になった。