先日行われた衆議院議員選挙の結果、自民公明の与党は過半数を獲得できず、少数与党になった。そのため予算委員会をはじめ多くの委員会で、立憲民主党をはじめとする野党が委員長ポストを獲得した。長らく自民党が会長を占めていた憲法審査会まで、立憲民主党の枝野幸男氏が会長になった。
委員長や会長の権限はとても大きく、それぞれの委員会における議事整理権、議場整理権を有している。議会運営における議長とほぼ同じ力を持つ。したがって法案審査をするかしないか、どのくらいの時間質問をするか、誰に質問させるか、いつ採決するかなど、委員会運営に関わる最終決定は委員長にある。審査会における会長も同じである。
憲法審査会長のもとには、各党からドントによって人数を決められた幹事が、審査のやり方について意見を述べることができる。私は与党側の責任者である筆頭幹事を務めることとなった。日常の審査会の運営については、野党の筆頭幹事の武正公一氏(立憲)と私の間で原案を作り、会長が差配する幹事会で合意を得ながら議論を進める。
先日はこの臨時国会でたった一回きりの審査会が行われた。各党の代表が憲法に対する考え方や、改正をするならどこを改正するかを、7分づつ述べあった。8党派あるので約1時間かかった。憲法調査会時代の中山太郎会長が作ったルールとして、少数政党にも平等の時間を与えることが、今も踏襲されているからだ。
自民、公明、維新、国民民主、有志の会は、先の通常国会で議論が積み重ねられた、緊急事態においても国会がきちんと機能するように、議員任期の延長を憲法に書き加えることを優先すべきだと述べた。
一方の立憲民主党は、国民投票におけるテレビCMやネットの規制、いずれかの院の4分の1以上が臨時国会の開催を要求したときは、政府は20日以内に国会を招集しなければならないと期限を切ること、さらにいわゆる7条解散を禁止することなどを優先すべきと述べた。共産党やれいわ新選組は、憲法改正そのものに反対を唱えた。
両勢力の間で改憲に対する考え方が大きくずれており、これを取りまとめていくのは至難の業である。加えて議論を仕切る会長が立憲民主であること、衆議院では改憲勢力が3分の2に満たないことなど、ハードルがいくつも存在する。全く見通しが立たないと言っても過言ではない。
しかし考え方によっては少数与党の立場をチャンスと捉えて、真摯な話し合いを続け、野党の意見も取り入れつつ、現実的な妥協点を見いだす可能性もあるのではないか。中山太郎門下生の一人である中野寛成氏は、「与党は大いなる度量を示し、野党は良識を持ってことにあたるべきだ」との名言を残した。今まさにこの言葉を実践すべき時が来たのではないだろうか。