今年の夏は昨年にも増して猛暑だった。いや過去形ではなく、彼岸を迎えた今でも猛暑が続いている。35℃を超える猛暑日は各地で記録を更新している。東京ではこの夏の猛暑日は19日で、記録更新中。1975年以降は平均5日程度だったから、その4倍にも達する。
その原因は地球温暖化であることは間違いなく、都会ではさらにヒートアイランド現象がつけ加わる。こうなると農産物の多くが高温障害、夏枯れの危機を迎える。我が家でも半年前から山形さくらんぼを注文し、楽しみに待っていたのだが、届いた品物はほとんど黒ずんでしまっていた。流通に問題があったのだろうが、元々高温障害のため、出荷段階で既に鮮度を失っていたかも知れない。
果物や野菜など広範に、高温障害や生産量の減少する事態は、それらの価格を釣り上げ、ただでさえも苦しい家計を、さらに厳しくすることにつながる。さらには農産物の自給率減少や食糧危機など、深刻な事態を引き起こしかねない。我々はもう一度「食糧安全保障」の意味や大切さを再認識しなければなるまい。
ところでこの夏はもう一つ、米不足が騒がれた。政府の備蓄米水準は、過去の米不足が2年続いても持ち堪えられるように、常に100万トン程度維持されているものの、この夏は台風の襲来や南海トラフ地震の臨時情報が初めて流され、各家庭での米の買い占め現象が顕著になった。農水省は備蓄米が十分あるから心配しないで、とアナウンスに必死だったが、備蓄米放出の可能性の言及や、実際の放出手続きの着手など、もう少し踏み込んだ対策が打てなかったのか、課題が残る。
将来の食糧不足を防ぐためには、しばらく続く地球温暖化を見据えて、高温に強い農作物の品種改良を組織的に行う必要がある。日本のバイオ技術を集中的に投入すれば、かなりの新品種が出来るはずだ。
もう一つは今から取り組めることだが、規格外の農作物の廃棄を減らすことである。既に家畜の飼料や肥料に加工するルートもあるが、まだまだ十分に活用されているとは言い難い。さらに規格外の野菜や果物であっても、市場に流通させたり、フードバンクなどに廉価で提供するルートも太くすることで、年間200万トンと言われるフードロスを削減する取り組みも、大変有効な手段である。