私たち地球上の生物は皆、太陽からの恩恵を受けている。太陽活動が今よりも弱くなれば地上の水分は凍りつき、生物の一定割合は死滅の運命を被る。逆に太陽活動が弱くなれば、地上の水分が干上がり、これまた死滅する生物が出てくる。
実際の太陽は極端に活性化したり弱体化することはないが、約11年周期で活動の波が起こる。それを起こしているのが太陽表面に現れる「黒点」の数である。黒点は太陽内部の磁場が表面に現れたものと言われており、この数が多くなると活動が活発になる「極大期」、少なくなったりなくなると「極少期」と言われる。極少期が長く続くと、地球は氷河期になるとも言われている。
極大期になると太陽表面から「太陽フレア」という巨大な炎が出現し、電磁波や高エネルギー粒子が放出され、地球にも届く。光と同じ速さなので、太陽からは約8分の速さで届く。天文学で予想された極大期は2025年頃と言われたが、今回は1年も早くなっている。しかも今回はフレアの出現回数が非常に多く、極域だけでなく低緯度の地域にも美しいオーロラが見られた。
オーロラだけなら「美しい、美しい」で済むが、地球の磁気圏を乱して無線通信を遮断したり、高高度の人工衛星に悪影響を与える。GPSが乱れたとの報告もあった。過去の極大化には地上の電源設備が影響を受けて、火災を起こした例もある。
地球の磁場のおかげで人類や生物には直接の影響はないが、今後の極大期に向けて、衛星や電波通信、電気系統には一定の防衛対策を行う必要がある。中国の古典『列子』には、天が落ちるといった無用な心配を指す「杞憂」という言葉があるが、太陽からの災難は決して杞憂ではない。