自民党の安定的な皇位継承の確保に関する懇談会は4月15日、4回目の会合を開いた。これまでの議論で、政府有識者会議が令和3年に提示した
(1)内親王・女王が婚姻後も皇室の身分を保持する。(2)皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする。
という2案について、概ね妥当との判断を下した。
今回の有識者・自民党の案は、皇族の数を如何に増やすかを議論の前提としているが、将来の皇室の姿を推定するとき、これらの案にはいくつかの矛盾が指摘される。
(1)はいわゆる女性宮家の創設だが、皇室の諸行事や国事行為や公的行為の負担を、内親王間で分担・軽減することには役立つが、一般の男子との婚姻により生まれた子は女系天皇となり、これを認めないことや皇族として認めないならば、皇位継承の安定確保には直結しない。
(2)は旧宮家を一部復活させるということだが、戦後GHQにより廃止された旧11宮家のルーツは伏見宮家であり、現天皇ご一家とは男系の血縁としては、600年前に分かれている。600年前の男系という細い糸を、無理やり現在に手繰り寄せることとなり、果たして多くの国民の賛同が得られるのか、「国民統合の象徴」「国民の総意」として認められるのか、甚だ心許ない。
確かに明治天皇は、4人の内親王を朝香宮家、東久邇宮家、竹田宮家、北白川宮家に嫁がせて、天皇家と宮家の血縁関係を強くされているが、それにより誕生した男子を天皇にしても、それはやはり女系天皇となる。
皇室典範第一条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」として、「男系男子」を頑なに守ろうとしているが、とても窮屈な議論に陥ってしまい、国民の常識からは益々離れていってしまうのではないか。安定的な皇位継承を議論する有識者会議や自民党の懇談会は、男系の男性天皇だけでなく、男系の女性天皇、女系の男性天皇、女系の女性天皇の可能性を排除せず、恒久的な皇位継承の安定化につなげるべきである。
さらに日本国憲法第一条の「その地位は主権の存する国民の総意による」は、当時の日本国民のそれなのか、占領軍GHQの総意なのか、意見の分かれるところだが、今に生きる憲法であれば、現在の国民の総意に基づく天皇でなければならないはずだ。
最近の世論調査では、女性天皇の誕生を望む声が8割にも届こうとしている。さらに男系の女性天皇を望む声は76%、女系の女性天皇を望む声は74%(朝日新聞デジタルより)で、両者の違いがわかった上での回答なのかは疑問だが、いずれにしても現在の国民の総意は、女性天皇の誕生に傾いているのではないか。