『Dr.スランプ』『ドラゴン・ボール』などの漫画・アニメの代表作で知られる鳥山朗氏が、去る3月1日に68歳で亡くなった。またメガヒットで今も放映中の『ちびまる子ちゃん』の声優TARAKOさんが、後を追うように3月4日に63歳で亡くなった。いずれも若すぎる死で、各方面から残念な声が挙がった。
一方で3月10日には、今年のアカデミー賞長編アニメ部門で宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が受賞し、視覚効果部門で山崎貴監督の『ゴジラー1.0』が受賞するという嬉しいニュースも飛び込んできた。漫画・アニメ界にとって悲喜交々の一週間となった。
思えば日本のアニメは世界中に広まっている。東南アジアばかりでなく、中東、ヨーロッパ、そして南米までテレビ放映されて、多くの子どもたちが見ている。「クール・ジャパン」の主力選手と言っても過言ではない。海外からのインバウンドを引き寄せる効果も大きいが、合わせて日本の文化や精神に対する理解も、これらを媒介として深まっているとも言える。
かつてのイラク戦争のあと、サマーワに駐留していた自衛隊の装甲車に、当初現地住民が卵や石を投げつけたことがあった。しかし隊員の機転により、サッカーアニメ『キャプテン翼』のイラストを装甲車両のサイドにつけたところ、まず子どもたちが車に寄ってきた。大人もそれに釣られて笑顔で迎えるようになったという。
各国との友好交流の素晴らしいアイテムだが、しかし日本政府としては、漫画・アニメに積極的に梃入れしたことはなかった。2009年頃、当時の麻生太郎総理がアニメーターの技術研修や育成、コンテンツの開発、世界への発信などを強力に進める「国立メディア芸術総合センター(仮称)」を京都に建設する計画が持ち上がったが、「巨大なマンガ喫茶を作るのか」といった言われなき批判に晒され、麻生構想は潰えてしまった。
最近この構想を復活させる動きが、国会内に出てきた。古屋圭司・衆議院議員を会長とするMANGA議員連盟の活動である。この議連は麻生構想が潰れたあとの2014年に結成されている。同議連は麻生構想を焼き直して「メディア芸術ナショナルセンター(仮称)」を建設しようとしている。私もその一員に加わっている。
多くの犠牲者を出した京都アニメーション事件という悲しみを乗り越えて、また文化庁の移転も加味すると、京都に同施設を作ることには意義がある。漫画・アニメという日本の宝をよりブラッシュアップして、世界の中の日本の地位を確かなものにしなければならない。