はじめのマイオピニオン - my opinion -
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小型月着陸機SLIMの快挙

 SLIMとはSmart Landar for Investigating Moonの略称である。少々長い名前だが直訳すると「月探査のための頭の良い着陸船」だろうか。JAXAが開発したSLIMが、先日1月20日に月面に着陸した。衝突せずに軟着陸に成功した国は、有人のアメリカをはじめ旧ソ連、中国、インドに続いて5番目となる。

 残念ながらメインエンジンの一つ日本不具合が生じ、何らかの弾みで逆さまに着陸した格好となった。そのため太陽電池が起動せず、観測を短時間行ったのに中断している。望みは西側から太陽が当たって、再起動することで、その可能性は十分あるという。

 JAXA担当者はそのため、このミッションは60点という辛い点数を付けたが、実際は80点、いや90点を付けてもいいようなパフォーマンスを示している。

 その一つは着陸目標地点にかなり正確に着陸したことが、分析の結果分かったことである。月面降下中は実に3~5mしか誤差がなく、最後に岩の存在を自ら見つけて、55m離れたところに着地したようだ。これまでの各国のそれが数kmからの10数kmだったことを考えると、まさにピンポイントを達成したのであり、快挙というべきだろう。

 もう一つは本体が着陸する直前にLEV-1とLEV-2という、小型の観測装置を放出したことである。これらは既に月面の撮影に成功しているが、タカラトミーやソニー、中央大学が開発に参加したもので、民間のおもちゃの技術が採用されているのは、実に日本的で面白い試みだ。

 各国がなぜここまでしのぎを削って月着陸に力を入れているかと言えば、月には膨大な水や希少な鉱物資源が埋蔵されているからだ。また将来の火星探査など、より遠隔な天体へのプラットフォームになるからだ。

 国連宇宙条約では地球外の天体を自国の領土にしてはならないと決めているが、その資源を探査・発掘した国の占有権は、暗黙に認められている。昔の植民地に似たような状況だ。今後はこの占有権についても国際的に何らかのルール作りが望まれている。

[ 2024.01.29 ]