はじめのマイオピニオン - my opinion -
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コロナ後の公衆衛生

 今年5月に新型コロナウイルス感染症が、伝染病2類から5類に下がったが、その後も緩やかにピークを迎え、現在はようやく落ち着いたところでホッとしている。ところが最近はコロナに代わり、インフルエンザと咽頭結膜熱が猛威を振るっている。

 咽頭結膜熱はいわゆる「プール熱」と呼ばれることが多く、学校などのプールで感染することが多い病気だ。最近、日本水泳連盟から、「プールを悪者にしかねない名称は使わないで」との指摘により、マスコミなどでは正式名称を使うこととなったようだ。

 現在インフルエンザは燎原の火の如く、瞬く間に感染が拡大しており、主に学校では学級閉鎖、学年閉鎖が後を絶たず、学校全体の閉鎖も起こっている。ただ今回はコロナの時に経験したオンライン授業を、スムーズに立ち上げられる環境にあったため、教育現場ではそれほど大きな混乱は生じていない。

 インフルエンザはこの夏の終わりから流行の兆しを見せていたが、なぜこんなに蔓延してしまったのだろうか。公衆衛生の専門家に聞くと、次のような答えが返ってきた。

 私たちの周りには様々なウイルスや雑菌が漂っており、それに対する抗体がいつのまにか身体の中に作られる。ところがコロナ撲滅のためにやたらと消毒液を撒き散らし、マスクもしっかり付けていたため、他のウイルスに触れる機会が少なくなり、抗体も作られにくくなった。そこにインフルエンザウイルスが侵入して、抵抗されることなく体内に取り込まれて発症するとのことだ。

 これに似たような現象が、花粉症やアレルギー患者の増加メカニズムにも見られるという。これまで花粉症やアレルギーを抑えていた因子の一つが、人間の体内に棲息する寄生虫の分泌物という研究成果が、理化学研究所によって明らかになっている。食生活や環境の改善によって、寄生虫類が駆除もしくは排除されたためにこの因子がなくなり、花粉症やアレルギー患者が増えてしまったというのも、同様の現象だろう。世の中きれいになれば全てよし、とはならないところが難しい。

 今回のインフルエンザの流行を予想する専門家はいたが、これほど蔓延するとは誰も予想していなかった。公衆衛生の分野からアラームがもう少し強く発せられていたら、状況は変わっていたかもしれない。医学の世界での公衆衛生学はあまり高い位置が与えられていないと聞くが、コロナ禍とアフター・コロナを経験した現在、もう少しその地位を上げるべきではないだろうか。

[ 2023.12.11 ]