はじめのマイオピニオン - my opinion -
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遺骨収集という、終わりのない難事業

 終戦記念日が過ぎると、マスコミからは極端に戦争関連記事や番組が減ってしまう。私はいつもこのことについて違和感を覚えている。短い時間でも、小さなスペースでも良いから、年間を通じて定期的に取り上げていってもらいたいものだ。

 そうした中、なかなか目に触れないが、大切な戦争関連の事業として、戦没者の遺骨収集というのがある。毎年厚労省が予算をつけて、激戦地に出かけていく。約20の班が各地に送られ1班は概ね10名で構成される。予算は年間で30億円を少し超えたところである。遺族会やボランティア団体もいくつか同行したり、単独で活動したりしている。その結果これまでに約35万柱が祖国に帰ってきたが、約100万柱が未だに残されたままである。年間で平均1,000柱が帰還している。まさに気の遠くなる話だ。

 現地に行く費用が高いこと。現地での情報が不明確で、ご遺骨の場所がなかなか特定できなこと。外交的・政治的問題で現地に入れないケースなど、遺骨収集にはさまざまな困難な伴う。最近はDNA鑑定も導入されたが、日本兵でない遺骨が戻ってしまったケースも少なくない。ごく稀ではあるが、ボランティア団体の一部が収集の成績を上げるために、現地の人々のご遺骨を日本兵のそれと偽ったこともあった。

 日本の政治家で遺骨収集に最も熱心だった方は、元厚生大臣で元総理の橋本龍太郎先生だったと記憶している。忙しい政務の間、何度も遺骨収集団に加わり、激戦地に足繁く通われていた。橋本先生は常々「英霊のご遺骨が戻らない限り、まだ戦争は終わっていないんだ」を口癖のように言っておられた。

 橋本先生の真似はなかなか出来るものではないが、我々はせめてこの難しい尊い事業に関心を持ち、毎年の予算編成において増額の声を出さなければならない。幸い2020年から遺骨収集の集中5ヵ年計画がスタートしているので、これを追い風にしなければならない。

[ 2023.09.18 ]