ちょうど100年前の関東大震災では、10万5000人強の犠牲者が出た。そのうち600人とも6000人とも言われる朝鮮半島出身者や中国人も含まれるが、この方々は震災そのものではなく、市民により暴殺されたという、歴史の闇に隠されていた事実があった。震災直後から、朝鮮人などが井戸に毒を投げ込んだとか、火をつけて回ったという、何の根拠もない噂が、混乱と恐怖を被っていた市民の中で、瞬く間に広がった。当時の政府官報や新聞も、それが事実であるかのように報道し、火に油を注いだ感がある。
100年経った今では起こり得ないこととされるが、人間の恐怖心は変わらないし、弱い立場を攻撃する心理は、昔も今も変わりないはずだ。加えて、多くの人がSNSで繋がっている現在、噂やフェイクニュースが拡散しやすい環境が整っている。進化を続ける再生AIを使ってどのような画像も動画も作れてしまうため、何が正しい情報なのか分かりにくくなってきている。
デマやフェイクニュースに惑わされないためには、常に物事を疑ってみる一人ひとりの態度が必要だが、合わせて関東大震災における事件をはじめ、過去における負の歴史・出来事を決して忘れないことが肝要だ。
ところが最近の政府は、公的な文書に記載されてないことを理由に、事件の存在を肯定も否定もしない。民間に残された資料には、明確に、詳細に記述されているにもかかわらず。さらに歴代の都知事が挨拶分を送付していた朝鮮人犠牲者の追悼式に、小池知事は7年間も送ってこなかったという。様々な経緯と背景があったことは想像に難くないが、純粋に哀悼の意を表すことは出来るはずだ。
歴史から目を背けることは、同じ過ちを繰り返すことになる。負の歴史を学んでこそ、人間は成長すると信じる。