1月23日に開会した通常国会が、この6月21日に閉会した。憲法に定められた150日間という長丁場である。今回も延長はなかったが、会期の終盤には解散風が吹き荒れた。G7広島サミットで岸田総理が獅子奮迅の活躍をし、ウクライナのゼレンスキー大統領まで来るという、思いがけないパプニングも手伝い、支持率が俄かにアップしたためである。立憲民主党や維新の会の選挙準備が整う前に解散した方が有利だ、という読みもあった。
しかしその直後、総理公邸を総理の家族が私的に使っていたことが暴露されたり、公明党との東京都内での公認問題の対立、さらにはマイナカードの登録の誤りが発覚したりなどで、支持率が急速に落ち込み、思わせぶりをした岸田総理自身が急ブレーキをかけざるを得なかった。「解散権を弄んでいる」と批判されたが、そう言われても仕方ないかも知れない。このことが影響して、終盤国会では落ち着いた議論が行われてにくかったことは、大いに反省すべきである。
さて今通常国会では、性的マイノリティへの差別をなくそうというLGBT理解増進法案や、「準難民」の新設や難民認定の適正化を目指す入管法改正案、原発運転期間の延長を可能にする法案など、国民世論を2分する法律の審議も少なくなかった。これらは何とか成立したものの、今後のフォローアップが欠かせないものとなろう。
また特に与野党対決が激しかったのは、防衛財源確保法案である。今後5年間での防衛費総額を43兆円とすることが既に決定しているが、その財源を賄うための基金を作る内容だ。その先には毎年1兆円の増税が見えてくるが、これは先送りしている。しかし政治は増税の議論から逃げてはいけない。国を守る責任は国や自衛隊ばかりでなく、国民一人ひとりがそれぞれの立場で果たさなければならない課題であり、これこそ国民に信を問うべき事柄である。
もう一つの重い課題は、少子化対策や子育て支援である。異次元の少子化対策として3兆数千億円を毎年投入するが、高校生まで所得制限なしで児童手当を給付することや、保育所の入園条件を撤廃することなど、ややばら撒きの感がある。それよりも男性の育休取得率アップや、若者の給与アップ、地域全体で子どもを育てる制度作り、意識改革を総動員で行うべきである。