ドイツ政府は2000年代から徐々に稼働原発を削減してきたが、とうとうこの度、原発ゼロを達成した。SPD(社会民主党)のシュレーダー首相や、連立政権に加わった緑の党がそれを先導したが、その後のメルケル首相も受け継いで来た。2011年の福島原発事故が、この動きを加速させたことは間違いないだろう。
この度のロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー危機が顕在化したため、ショルツ首相は時期を先送りし、計画より半年ほど遅れて脱原発を達成した。日本とドイツは第二次世界大戦の敗戦国で、戦後復興も素早く成し遂げ、優秀な技術者が多いなど、いくつかの共通点が挙げられるが、ドイツ国民の原理原則を大事にして頑固なところは、日本人には真似ができないところである。
原発ゼロが達成出来たもう一つの理由であり、しかも最大の理由は、ドイツは原発大国のフランスやチェコと地続きであって、いつでも電力の融通が受けられるという利点があるからだ。もちろん再生可能エネルギーの開発も盛んだが、コストがかかるため、比較的安い原発由来の電力を輸入しているのが現状だ。
そこが島国日本との大きな違いである。日本は多くのエネルギーを輸入に頼らざるを得ず、自前のエネルギーとしての原発は、依然として有力なベース電源である。もちろん太陽光、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーによる代替は求めるべきだが、出力にばらつきがあり、コストが高いことが難点である。
しかしいつまでも現状に甘んじていてはいけない。「トイレのない高級マンション」と揶揄される、核廃棄物の最終処分場の不在を解消すること。小型原子炉(SMR)や高速増殖炉への転換を図ること。最終的には「地上に太陽を」を実現する核融合技術の完成が待ち望まれる。