はじめのマイオピニオン - my opinion -
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かりゆしの日に考える

 6月1日は「かりゆしの日」である。本場沖縄では毎年イベントが行われるが、今年は台風2号の接近と重なり、残念ながら中止になったと聞く。国会や自民党でも、先週はかりゆしを着用する議員が散見された。かりゆしは沖縄の正装なので、国会の中でもスーツに準じる扱いである。また6月6日には国会や自民党の会合で、かりゆし着用が推奨あるいは努力義務となっている。

 皆でかりゆしを着用すれば、沖縄県の産業振興に資するだけではなく、「沖縄を大切にしているよ」とか、「沖縄県民の気持ちや考えに寄り添っているよ」という意思表示を、国会として、政党として、あるいは議員個人として行うことになる。そのことに文句を言うつもりもないし、否定するつもりもない。むしろ好ましいことと思う。しかし私は、進んでかりゆしを着る気持ちになれないでいる。

 何とも、どうしようもない天邪鬼である。難しく考えなくていいのではという人もいる。しかし私は、国会という仕事場でかりゆしを着るほど、沖縄のために仕事をしているとは、自信を持って言うことが出来ない。沖縄の人々の考えや気持ちをきちんと理解しているかというと、それも自信がない。逆にかりゆしを着ることで、沖縄への理解が進むのかも知れないし、意識付けや動機付けになるという考え方もありだろう。しかしどうしても私にはその気になれないでいる。

 昨年『島守の塔』という映画が、地元新聞社の尽力により完成した。終戦目前に、沖縄に赴任した神戸出身の島田叡知事と、栃木出身の荒井退造警察部長が、沖縄地上戦の前に多くの県民を島外に疎開させた。また残された人々の命を守るため死力を尽くした。この2人を主人公とした映画である。

 荒井警察部長は宇都宮市上籠谷の出身で、私の高校の大先輩である。そのためこの映画を3度ほど鑑賞する機会があった。当時の沖縄県民の四人にひとりが犠牲になったという、沖縄地上戦の凄惨な状況が具に描写され、今も癒されることのない沖縄の人びとの魂に、居住まいを正さずにはいられなかった。

 このような経験からも、私は私なりに沖縄のために何かを行い、その結果として沖縄の問題を少しでも解決したと言えるまでは、かりゆしは着用しないと心に決めている。とても頑固な議員のひとりとして、敢えて心情を吐露させてもらったが、それぞれ議員皆様の判断で着用することに疑義を挟む意図ではないことを、再度申し上げておきたい。また関係各所に迷惑をかけることがあったなら、心からお詫びを申し上げたい。

[ 2023.06.05 ]