3年以上世界と日本に猛威を振るってきた新型コロナウイルス感染症も、この度、結核と同じ2類から、季節性インフルエンザと同じ5類にランクを下げることとなった。マスクの着用については既に3月半ばから自由になったが、新規感染者の全数報告義務もなくなり、入院勧告の制度もなくなる。一方で治療や入院の費用は、徐々に公費負担から自己負担に移行していくこととなる。
このようなコロナ対策の緩和は、日常を取り戻す営みを後押ししてくれるが、しかしまだコロナは「普通の病気」だと、手放しで喜ぶ訳にはいかないようだ。感染当初に比べ毒性はかなり弱まったが、高齢者や基礎疾患のある人が罹ると、重症化することが少なくない。最近また感染者が増える傾向にあり、人混みなどでの適切なマスク着用や、うがい手洗いなど基本的な予防対策をとることは、まだまだ重要である。
ところで最近の新聞や雑誌では、コロナ禍の3年間の総括や評価を試みる例が多くなった。その中でも特に目立つのは、飲食店や旅行・宿泊業、音楽や舞台芸術などが行き詰まったり、祭りやイベントなどが悉く中止となるなどの、負の遺産の検証である。学校教育も一時は対面でなくオンラインになったり、運動会や修学旅行が中止になったりして、子どもたちには気の毒だった。
さらに政府のコロナ対策費が膨大に積み上がり、国債発行額も急増した。コロナ対策と銘打ちながら、既存政策の焼き直しであったり、無駄遣いや使い残しも数多く指摘されたりしている。緊急事態への対応なのだから、やむを得ない事情もあるが、対コロナ政策の中身や予算執行が適切であったか否か、政府としてきちんと検証する必要がある。
しかし一方ではプラス面もあったのではないか。多くの人々が会社に赴かず、ウェッブの活用によるテレワークが定着した。コロナ後は出社・対面の姿に戻って来たが、働き方改革を一歩進める契機ともなった。学校では対面授業ができない間、試行錯誤しながらオンライン授業に挑戦した。今はほとんど対面授業に戻っているが、オンライン授業で撮りためた授業コンテンツを、予習や学び直し、基礎的学習の教材に活用する動きもある。
我々はコロナとの戦いののち、このような負の遺産をきちんと検証することを怠ってはならないが、一方で感染防止のために余儀なくされた、新しい働き方やライフスタイルを積極的に日常生活の中に取り入れ、負の遺産を上回るメリットを創り出さなければならない。