はじめのマイオピニオン - my opinion -
船田はじめが毎週月曜日に提言するメールマガジン。購読ご希望の方は下記フォームからお願いします。
お名前
メールアドレス
    配信停止申込
国際宇宙ステーションの危機

 1995年から建設が始まった国際宇宙ステーション(ISS)は、NASA(アメリカ)、ロスコスモス(ロシア)、JAXA(日本)、ESA(欧州)、CSA(カナダ)の5か国が参加する国際共同研究機関だ。現在では総質量350トン、長さは100mにも達している。現在では常時6名程度の宇宙飛行士が滞在して、宇宙空間や無重力状態を利用した様々な科学実験が行われ、その成果は私たちの生活や産業に大きなインパクトを与えている。

 そのISSに宇宙飛行士を往還させているのは、ロシアのソユーズと、NASAのスペースシャトル、その引退後はクルードラゴンである。そのソユーズに昨年12月15日に、スペースデブリあるいは流星の元になる物質が高速で衝突したため、船体に小さな穴が開き、そこから冷却剤が漏れた映像が撮影された。

 幸い、当時ISSに滞在していた若田光一さんら宇宙飛行士は皆な無事だったし、居住空間に特別な変化はなかったという。しかし往還機の一つのソユーズの温度管理が万全ではなくなり、普段なら冷却されているフライト・コンピュータに誤作動が生じる恐れがあると言われている。したがってそのままソユーズを使うことは安全上の問題がある。

 日本のマスコミではあまり大きな騒ぎとなっておらず、後追いの記事もほとんどないが、事態は必ずしも楽観できるものではないのではないか。最悪のケースでは2つの往還機の一つが使えなくなり、クルードラゴンのみに頼ることになるかも知れない。それは安全の担保がなくなることを意味する。

 担保を十全に確保するには、損傷したソユーズに代えて、万全なソユーズを打ち上げてドッキングさせることだが、肝心のロシアに、今それだけの余裕があるのだろうか。またそれを行う意思があるのだろうか。ウクライナ戦争の余波が宇宙にまで及んでいるのである。

 地上で睨み合っている米ロ両国が、宇宙で仲良くし難いことは容易に想像できる。しかしISSを救うためにはお互いが話し合い、智慧を出し合い、譲歩し合うことが不可欠である。宇宙飛行士が見る地球には国境線が描かれていないのだから、彼らからの呼びかけを、米ロは最大限尊重しなければならないはずだ。

[ 2023.01.09 ]