はじめのマイオピニオン - my opinion -
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政治の不作為を詫びる

 先日閉会した臨時国会では、旧統一教会による被害防止・救済策の策定が最大課題だった。安倍元総理の銃撃事件以来、被害の実態があらためて浮き彫りになり、特に宗教二世と呼ばれる子どもたちの過酷な生活実態が指摘された。

 我々は過去の被害を救済するため、相談窓口を飛躍的に充実させるとともに、被害の防止のために、霊感商法や悪質商法の要件を拡大する消費者契約法改正案、更には不正な方法で寄付をさせることを禁じる寄付新法案を必死で作り、この国会の会期末ギリギリで成立させることが出来た。

 急拵えだったため分かりにくい法律となってしまったが、国民の皆様に分かりやすいQ&Aや逐条解説を急ピッチで整備する予定である。私も自民党消費者問題調査会長として、法案作成に関わってきたため、最終版で立憲民主党まで賛成に回ってくれたことに、内心ホッとしている。

 しかしなお私にはやり切れない気持ちが残る。統一教会による消費者被害が騒がれはじめたのは、1980年代からであり、合同結婚式の派手な場面もマスコミに何度もとりあげられてた。我々は政治の場に身を置いていたが、あの当時からこの問題を正面から取り組み、それを解決しようと動き出さなかった。それが被害を拡大し、多額寄付の強要に至っても動かなかった。まさに「政治の不作為」が被害を拡大してしまった。

 「政治の不作為」は今に始まったことではなく、過去には幾つかの例があるが、一つの典型がハンセン病患者への対応である。以前は「癩病」と呼ばれ不治の病だった。聖書にも取り上げられる古い疾患で、患者は長期間、全国に15ヶ所ある療養所に隔離され、家族は酷い偏見に晒されていた。患者に不妊治療を強制したり、強制的に堕胎させられたりした。

 ところが1980年代になってようやくハンセン病の特効薬が開発され、もう不治の病ではなくなったのだが、その後も患者の隔離措置が継続され人権の抑圧も続いた。患者団体が国に対して謝罪と損害賠償を求めた裁判で、時の小泉総理が上告を断念して国は和解の道を選んだ。悪戯に隔離措置を長引かせたことは、明らかに「政治の不作為」であり、我々は深く反省した。

 ケースは違えど、我々は何回となく不作為により、国民に不利益を与えてきた。この反省と認識に立脚して、本当の意味で「聞く耳」を持ち、アンテナを高くして国民の声を聞がなければ、政治家は失格と心得なければならない。

[ 2022.12.19 ]