去る7月8日、参議院選挙の応援演説の最中に、安倍元総理が凶弾に倒れるという、驚愕の事件が発生した。その後旧統一教会による被害や宗教2世と呼ばれる人々の存在がクローズアップされ、にわかに国内最大の政治課題となった。
旧統一教会は2015年に世界平和統一家庭連合に名称変更しているが、30数年前から強引な霊感商法や多額の寄付を強要して、多くの人々が苦しんできた。政府の機関や多くの弁護士にSOSが発せられ、裁判事例も重なってきたが、これに対して政治の動きが極めて鈍く、結果として被害者の苦しみが継続し、被害の拡大を招いてしまったことに、我々は深く反省しなければならない。
この反省の上に立って、岸田総理のリーダーシップのもとで、我々は霊感商法をより広く取り締まるための消費者契約法改正や、法テラスなどの相談窓口の拡大充実を行うこととした。しかし最近の被害例としては、モノを買わせることより寄付を強要することの方が多くなり、これを取り締まるための、「法人への寄付の不当な勧誘の防止法(新法)」という新たな立法に取り組んだ。
具体的にはまず、法人が寄付を勧誘する際の6類型の不当行為を禁止し、違反した場合は報告・勧告・公表などの行政処分と罰則を設けた。しかしそれだけでは十分でなく、勧誘にあたってのマインドコントロールも不当としなければならない。
ところがそれを直接法律で定義することは困難なため、勧誘にあたっての配慮義務として、「自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないようにする」ことを盛り込んだ。このことにより今後の裁判における拠り所となることが期待される。
もう一つ難しかった点は、寄付をしてしまった人の配偶者や子のが生活費などをどうやって保全するかであった。憲法29条に規定する財産権は、本人以外が侵してはならないとされている。そこで民法に規定されている債権者代位権に特例を設け、子どもの養育費など本来子どもが現在から将来に受け取るはずの債権(お金)を、供託などで保全する道を開くこととした。
これらの原案に対して、野党からはいくつかの点で修正要求があり、その一部を修正で取り入れるなど、粘り強い折衝を続けた結果、共産党を除く全ての政党が賛成に回ることとなり、安堵している。
しかしながら旧統一教会被害の防止・救済のためには、まだまだ不十分な状況と考えており、今後も各党間で継続して協議を続け、2年後の見直しにおいて、きちんと改善していくことが大切だと考えている。