はじめのマイオピニオン - my opinion -
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科学技術と防衛

 ロシアのウクライナ侵攻や習近平氏の3選により、台湾有事が現実味を帯びて来ている。日本の防衛費も大幅に増やさなければならない環境にあるが、科学技術振興費の一部も「総合防衛費」という名目で、防衛費として計上されることになりそうだ。

 数日前に皆既月食と天王星食が同時に観測されたが、実に442年ぶりの出来事で、織田信長が本能寺で明智光秀に奇襲され、自害する2年前だったということだ。次に同じ現象が起こるのは322年後という。これだけ正確に軌道計算ができるのはとても驚きだし、しかも大型コンピュータでなく普通のパソコンでできるというのも驚きだ。

コンピュータは戦争から生まれたと言われる。迫撃砲の軌道計算を瞬時に行う必要性から計算機が考案された。当初は手動のダイアル式計算機、次に真空管を使った計算機だった。余談だが、アポロ11号の月面着陸をサポートしたのは、真空管コンピュータだった。そして今に至るのは半導体を使ったコンピュータである。やがて量子コンピュータに取って代わられるだろう。

 インターネットは今でこそ必須のシステムだが、これも最初はアメリカ軍が、内部情報を迅速に各部署に届けるために考案されたものと言われている。これが民生用にこれほどまで使われるとは、当時の軍関係者も驚いていることだろう。

 以上の2つの例は、戦争をいかに有利に遂行するかを目的として開発された技術であり、その転用として民生用に拡大普及した好例である。アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)によって開発された技術は、どんどん民生用にも採用されている。「デュアルユース」の理想型と言っても過言ではない。

 ところで日本の場合はどうか。憲法の要請や国是としても専守防衛が旗印なので、専ら戦争遂行のための技術開発を中心に据えることは、世論が許さない。しかしある開発された技術が防衛にも利用されて、パフォーマンスを高めることは、許されても良いのではないか。民生技術の防衛転用は、我が国の安全保障に資するものである。

[ 2022.11.14 ]