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エリザベス女王の逝去

 9月9日未明(現地は8日)、英国のエリザベス女王がスコットランドのバルモラル城にて逝去された。享年96歳のご長寿だった。今年6月には御在位70年(プラチナ・ジュビリー)をお祝いしたばかりで、英国民はもとより世界の多くの人々からも祝意が示されていた。直ちに王位継承1位のチャールズ皇太子が新国王となった。

 エリザベス女王の在位期間は1952年2月6日から、亡くなるまでの70年214日に及び、歴代の英国王としては63年7ヶ月間在位した、19世紀のヴィクトリア女王を抜いて第1位となった。過去の国家元首の最長は、フランスのルイ14世の72年110日間と言われており、次がエリザベス女王、3番目がタイのプミポン前国王で70年126日だった。ちなみに昭和天皇は62年14日間だった。

 エリザベス女王はその在位の長さもさることながら、在位中に実に様々な危機を経験された。国家としては北アイルランド急進派IRAとの確執と和解、フォークランド紛争、最近ではEUからの離脱(ブレグジット)やスコットランド独立運動などがあった。王室としてはダイアナ元妃の非業の死や、ヘンリー王子の王室離脱、そして最愛の夫・フィリップ殿下との別れなども経験した。

 しかしその都度エリザベス女王は、英国の統合の象徴として、堅固にその地位を保ち、英国民の尊敬の中心であり続けた。またかつての植民地も含めた英連邦(コモンウェルス)15カ国の元首として、国際社会で大きな影響力を持つ立場も務められた。

 英国王室は18世紀頃から「君臨すれども統治せず」をモットーとして、世界の王室の模範となった。軍事はもちろん政治とも一定の距離を保ちつつ、国を象徴する存在だと認識されるが、その距離感がなかなか難しく、国により様々なバリエーションがある。その中でも英国王室はやや政治に近いところにあるのかもしれない。一方我が国の皇室はやや遠いところにある。

 英国や英連邦が国際政治の中で厳然とした存在感を示せているのも、王室の存在が大きいからではないだろうか。いわゆる「ソフトパワー」を持っているのが英王室であり、エリザベス女王はまさにその中心であった。その存在とパワーを新国王が発揮できるかどうかは、なかなか難しいかもしれない。

[ 2022.09.12 ]