はじめのマイオピニオン - my opinion -
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戦争の記憶を受け継ぐ

 今年も慰霊の8月15日を迎えた。私も地元の護国神社で開かれた戦没者追悼式に参列した。寂しく思ったのは、年を経ることに遺族会の皆様の参列が少なくなって行くことだ。時の流れと諦めるしかないが、それだけ戦争を知らない人々が増えたということか。

 もちろん私は昭和28年生まれだから、戦争の体験は全くないが、両親が戦時中どのように過ごしていたか、よく聞かされていたので、追体験していたのかも知れない。ここ数日はテレビでも終戦や戦争関連の番組を盛んに流しているので、そうした影響も少なからず受ける昨今である。

 地元出身で沖縄戦の時の警察部長だった荒井退造と、コンビを組んだ島田叡知事を扱った映画『島守の塔』が好評を得ているが、沖縄での地上戦の悲惨さは映画では表現出来ないだろう。島田知事を演じた俳優の萩原聖人さんは、ウクライナの現状を念頭に、「この映画は決して過去の話ではない」とインタビューに応じた。

 私も戦争の悲惨さを語り継ぐ活動の一つとして、下野中学校「一休会」の慰霊祭がある。現在の作新学院高校の中庭にある慰霊碑に対して、1学期終業式の後生徒会役員が集合して、毎年花を手向けている。

 「一休会」とは昭和19年に下野中学校に入学した同級生が作ったクラス会で、昭和20年の宇都宮空襲で級友2名を失い、空襲の片づけ動員の際、米空母艦載機からの機銃掃射で5名を失っている。その会の皆さんは皆90歳に達しており、数年前から生徒会主催で慰霊祭を行うこととなった。

 その際私は校長として、高校生に太平洋戦争の悲惨さを述べているが、親からの話やメディア、故半藤一利先生の書物などからの引用が多く、若い世代の皆さんに正しく伝えられているかどうか、甚だ心苦しいところだ。

 昨今はウクライナ戦争の余波を受けて、東アジア地域でも緊張が高まりつつある。そうした中我が国の防衛力も、これまで以上に強化すべきとの世論が高まっている。もちろんそれが大事なことには違いないが、日本人の習性で熱しやすくなることも心配だ。

 防衛費を増やすとしても、必要な装備を精査し積み上げていく冷静さを持たなければならない。同時に車の両輪とも言われる外交力を高めることも、決して忘れてはならない。今こそ過去の戦争の記憶、受け継がれた記憶も含めて、もう一度思い起こす必要性が高まっているのではないだろうか。

[ 2022.08.16 ]