小惑星探査機はやぶさ2が、小惑星リュウグウから昨年持ち帰った砂粒に、タンパク質の元となる数十種類のアミノ酸が含まれることを、世界の研究者が確認した。あらためて、はやぶさ1の教訓を全てクリアした、はやぶさ2の完璧なミッションの成果であると、拍手を送りたい。
従来の学説では、アミノ酸や生命の源は地球上で作られたという考えが有力だった。ロシアのオパーリンが提唱し、ミラーが実験した有機物の生成を、学生時代に習った。メタンやアンモニアを原始大気に例え、雷を模した放電を繰り返すと、やがて器具の底に有機物が溜まるというものだ。
一方、これまで地球に降り注いだ隕石からもアミノ酸が検出されていたが、落下してから付着したものではないかと、懐疑的な学者が多かった。しかし今回の発見で、アミノ酸は地球外にも存在し、地球上で生命が誕生したことを否定するものではないが、地球外からもたらされたとする説が一挙に有力となった。
さらに地球外の天体に生命が存在する可能性も高まったのではないだろうか。生命が存在するには水や大気の存在と、適度な温度が必要である。地球はその条件を満たしているわけだが、太陽系の真ん中の恒星から、適度な距離にある惑星であり、かつ水や大気を繋ぎ止めるだけの大きさの惑星に限られる。
この太陽系ではもちろん地球と、火星の可能性が条件に叶っている。ただ火星は少し寒すぎて、水分はあっても固体の状態であり、小さすぎるので大気を繋ぎ止められなかった。過去に生命が存在したことは否定できない。こうしてみると生命が存在する条件を満たす惑星体は、ごく稀にしか存在しないのだが、可能性はゼロではない。大雑把な試算だが、広い銀河系の中で生命の存在が可能な惑星は、少なくとも38個あるとされている。
1977年に打ち上げられたアメリカの探査機ボイジャー1号が、まもなく太陽系を離れつつあるが、地球上には人類をはじめとする生命体が存在することを、プレートに刻んで載せた。地球外の知的生命に拾われることを期待してのプロジェクトだ。またSETI(地球外知的生命体)プロジェクトでは、地球外の生命体と交信することを目指しているが、顕著な成果は得られていない。
例え地球外に知的生命体が存在しても我々と交信出来るほどに知能や技術が発達していなければ、その存在は確かめられない。また過去に存在していても、何らかの理由で絶滅してしまったかも知れない。さらに我々の太陽から一番近い恒星は、ケンタウルス座のアルファ・ケンタウリだが、光の速さでも4年かかる距離にある。そこに生命が宿る惑星があっても、返事が届くまで8年かかる。
我々は広大な宇宙の中で天涯孤独の存在なのだろうか。しかし今回のアミノ酸の発見で、仲間が存在する可能性は少し高まった。希望の持てる発見になった。