はじめのマイオピニオン - my opinion -
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EUの苦悶

 欧州連合(EU)の母体である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)は、第二次世界大戦後の荒廃した欧州を復興させ、二度と紛争が起きないようにするために、紛争の一因である資源を共同管理して、経済の相互依存を進めようとして1952年5月9日に創設された。その日を今でも「ヨーロッパデー」として各地で祝っている。その後も経済統合を目指すEECから、政治的統合を目指すECそしてEUへと、着実に歩みを進めてきた。

 EUの加盟国は英国が離脱したものの27ヶ国にのぼる。申請中が2022年3月現在、アルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコの5カ国が「加盟候補国」、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの2カ国が「潜在的加盟候補国」となっている。さらに、今年2月24日のロシアの侵攻を受けたウクライナおよび、同国周辺のジョージアとモルドバが立て続けに加盟を申請した。

しかしEUのもう一つの課題である政治統合については、暗雲が立ち込めている。数年前のシリア難民の受け入れなどを巡って、英国が離脱(ブレグジット)したり、ギリシャが債務超過となって警告発せられたりした。この度のウクライナ危機にどう対処するかでも、深刻な岐路に立たされている。武器供与を含むウクライナ支援やロシアへの経済制裁で足並みを揃えたいところだが、ロシアからの原油や天然ガスの禁輸措置については既に足並みが乱れている。特にハンガリーは親ロシアのオルバーン首相が政権を担っており、ウクライナ支援に消極的であるばかりか、原油も変わらずにロシアから買い入れるとしている。

 さらにEU全体としては、エネルギー問題が今後最大の課題となるだろう。イギリスやノルウェーは北海油田があり、風力発電量も豊富にある。フランスは原発大国である。しかしドイツはエネルギーの3割強をロシアに依存しており、代替輸入や再生可能エネルギーでは賄いきれず、メルケル政権の時に宣言した脱原発政策を見直さざるを得ないだろう。東欧諸国はさらにロシアからの依存度が高く、リトアニアが8割強、ポーランドが6割弱となっている。因みに日本の依存度は1割を相当下回る。ロシアからのエネルギー遮断はEUにとって、まさに死活問題になる。

 EUから見ればウクライナは庭先であり、この度のロシアの軍事侵略に対する彼らの危機感は大変強い。そのため結束してロシアにあたることは当然視されるが、国民生活の安定を考えると各国とも難しい判断を迫られる。今後のエネルギー危機をどう乗り切るか、再びヨーロッパの智慧が試される時ではないだろうか。私も日本EU友好議員連盟の会長として、EUとEU議会がどのような結論を導き出すのか、注目しなければならないし、協力できることはしていかなければならないと考える。

[ 2022.05.25 ]