はじめのマイオピニオン - my opinion -
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大人の年齢の引き下げについて

 改正民法が4月1日から施行され、大人の年齢(成年年齢)が18歳以上に引き下げられた。明治以来140年ぶりの改正である。この火付け役の一人である私としては、まさに感無量の思いである。

 平成19年の衆議院憲法改正特別委員会で、私が野党との交渉役として憲法改正国民投票法案を作る際、諸外国の多くが投票年齢を18歳以上としていること、また憲法改正という国の将来を決めていく時に、できるだけ若い人々にも参加してほしいという理由から、国民投票権年齢を18歳以上と与野党で合意したことから始まった。

 その数年後に、同じ投票という行為なのに公職の選挙権年齢が20歳以上、国民投票が18歳以上と食い違っているのは良くないとして、公職選挙法を改正して選挙権年齢を18歳以上に引き下げた。さらに投票や選挙運動が18歳から可能だとすれば、当然大人として扱かわなければならないとして、成年年齢すなわち大人の年齢を18歳以上に引き下げるよう、民法の改正を行なってきたところである。

 この結果として、18歳・19歳の若者が政治に参加し選挙にかかわることができる一方、クレジットカードや不動産の契約が一人で出来ることになった。同時に権利が拡大する一方で、保護者の権限で契約を取り消すことができなくなった。このため消費者被害が低年齢化したり、若くして多重債務による破産に至るケースが増えたりするのではないか、との懸念も指摘されている。

 このような成年年齢の引き下げに伴う影の部分は当初から予想されてきたことなので、数年前から政府に対応をお願いしてきた。具体的には、文科省、総務省、消費者庁の共同作業により、高校に副教材の『社会の扉』を作成・配布して、授業やLHRでの消費者教育に活用してもらうこととした。ほとんどの高校で実行されているが、なお徹底していかなければならない。

 また成人式をどうするかでも議論が沸騰していた。18歳を迎えた後の1月は大学受験の真っ最中であったり、就職を間近に控えていたりと、とても慌ただしい成人式にならざるを得ず、意義が希薄になる懸念がある。そこで法務省にお願いして、自治体や当該年齢の若者やその親にアンケート調査を依頼した。

 その結果、多くの関係者が満20歳で成人式に代わるイベントを実施すべきと回答していた。このことを受けて法務省は総務省とも連携して、いわゆる「20歳(はたち)を祝う会」を望む自治体や当事者が多いという情報提供を行なった。そして多くの自治体がこれに準拠することとなった。

 マスコミは消費者被害の低年齢化という影の部分を、ことさら強調して報道する傾向にある。しかし若者の政治参加や、大人としての自覚や責任感を持ってもらうという、プラスの側面にも目を向けてほしい。もちろん消費者被害や若年債務者の発生を防ぐための努力を惜しんではならないが。

[ 2022.04.04 ]