はじめのマイオピニオン - my opinion -
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ウクライナ危機の今後について

 ロシアによるウクライナ侵略が始まってから1ヶ月が経過した。連日マスコミではウクライナ国内の極めて深刻な現状、悲惨な状況が報じられている。民間人犠牲者が急激に増加し、難民も400万人に達する勢いで、国内難民も含めれば1000万人という、第二次世界大戦以来の多数にのぼっている。

 国際社会の大多数が「ロシアの力による現状変更は認められない」との認識で一致しており、ロシアに対する世論的・経済的に強力な包囲網が構築されつつある。一方で短時日で作戦が完了すると見込んでいたロシア軍は、ウクライナ軍や市民の徹底抗戦に手こずり、戦況は膠着状態に陥っている。プーチン大統領の焦りが化学・生物兵器の使用への誘惑を高めており、核使用を匂わせる発言にも結びついている。これが現実のものとなれば、まさに言語道断の暴挙と言わざるを得ない。

 ロシアの銀行のSWIFTからの遮断、最恵国待遇の取り消しなど、国際社会は経済制裁を強化した。この影響はロシア経済を直撃するばかりでなく、世界経済にも打撃を与えている。ロシアが輸出してきたLNGや石炭、鉄鋼、希少金属、小麦などが市場から消えて、既に物資の不足と高騰を招いている。難民を支援することで国際社会は足並み揃えているが、東欧をはじめとするEU諸国の難民受け入れの負担は日を追って増している。国際社会はウクライナのために、しばらく我慢をしなければならないだろう。

 ウクライナ危機の今後は、まだ見通せない。プーチン大統領が失脚することは現実的ではない。当事国同士の停戦交渉も遅々として進展が見られない。これ以上の犠牲と破壊を防ぐためには、停戦に向けてG7やEU、NATOも智慧を出さなければならない。例えばウクライナにはEU加盟を認めたとしても、NATOへの加盟は断念させることや、ロシアとNATO諸国との適切な距離を置くことなどが考えられる。

 先週水曜日の、ゼレンスキー大統領の国会演説は、思った以上に淡々としていたが、それだけに説得力があった。「津波」「原発事故」「サリン」などのワードを揃え、日本側の関心を呼ぶという周到な準備をしていた。彼のリーダーシップには多くの人々が感銘を受けている。ウクライナを助けようという国際世論を形成することに成功している。

 しかし同時に我々は、感情に走り過ぎてはならない。何故このような悲惨な事態に陥ったのか、どうすれば停戦が実現するのか、どうすればロシア軍が撤退できるのか、どうすればウクライナが安全に存在できるのか、冷静に考える姿勢が大切だ。これからは感情より理性が大切になる。

 第三次世界大戦は確実に、全世界に壊滅的損害を及ぼす。これだけは何としても避けなければならない。ロシアに戦争犯罪の責任を負わせるのは当然だが、一方ではプーチン大統領の怒りや不安や焦りを鎮め、ロシアを平和裡に存在させるだけの安定した国際秩序を、世界の為政者は作り上げる努力を模索しなければならない。

[ 2022.03.28 ]