アメリカの支援を受けたアフガニスタン政府と、イスラム武装集団タリバンとの間で内戦状態が続いていたが、アメリカ軍の規模縮小に伴って、タリバンが各地を次々と制圧し、遂にこの8月に首都カブールが陥落した。同月末のアメリカ軍完全撤退を前にして、多くの欧米関係者は脱出出来たが、自衛隊機派遣の遅れもあって、日本大使館の現地採用職員やJICAの協力者などが現地に取り残されている。
旧アフガニスタン政府に協力した者や日本に協力した者は、タリバンから睨まれている状態だ。場合によっては迫害を受けたり、命の危険に晒されるケースも伝えられる。そうした中にカブール大学所属の研究者もいる。2001年から国費留学生として、日本の東京農工大学や外語大学などで研鑽して帰国した数十名の学者たちだ。その中でも既に命の危険を感じる脅迫を受けているSさん(安全のために名前を伏せます)が、カブールから脱出しようと懸命の努力をしている。
日本側の協力者もあって、第三国経由で日本に入国するための手続きは整ったが、まずは無事にカブール空港から飛び立てるか心配である。さらに今回のオミクロン株の蔓延防止の一環として、外国人の入国禁止・制限措置が立ちはだかる。オミクロン株が国内に入り込むことを阻止するという国益は大切だが、Sさんのケースを何とか「特別の事情」に該当するものとして認めてもらいたい。
Sさんほど差し迫った状況ではないが、数十人の元日本留学生も、今後タリバンの標的になる可能性があり、Sさんの日本入国が実現できるならば、残りの人々にとっては朗報となる。また彼らの日本国内での受け入れ態勢も、今のうちからしっかりしておく必要がある。我々はもっとアフガニスタンからの悲鳴を、しっかりと聴かなければならない。