はじめのマイオピニオン - my opinion -
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少しドイツが心配だ!

 16年首相を務めてきたメルケル氏が率いるCDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)が先の総選挙で敗退し、代わりに第1党となったSPD(社会民主党)を中心として、緑の党と自由民主党との連立政権が樹立された。SPD党首のショルツ氏がメルケル氏の後の首相を務める。

 ショルツ氏は中道左派のSPDの中でも右寄りの立場にあり、メルケル氏との差はさほど大きくないと言われている。例えばかつてのSPDのシュレーダー政権が進めた「労働市場改革」を自ら縮小し、財政規律を重視する立場を表明している。しかしEUの牽引役やNATOのまとめ役を担ったメルケル氏の後継者というわけには行かず、ドイツの役割は次第に変化していくだろう。

 ショルツ氏の発言には既にその変化が見出される。NATO諸国の中ではノルウェーに続いて、核兵器禁止条約のオブザーバーを視野に入れているようだ。米英仏の核の傘に守られつつも、そこから一歩踏み出そうとしており、NATO諸国のみならず、国際社会に対する影響は少なくない。

 さらに環境重視の緑の党が連立に入ったため、環境対策や地球温暖化対策も従来より厳しくなる可能性が大きい。石炭火力の2030年までの廃止、再生可能エネルギー比率の80%への引き上げ、カーボンニュートラルの目標年度を2050年から2040年に前倒しするなど、意欲的な目標が並べられそうだ。

 これらの環境政策を推し進める結果、再生可能エネルギーにおけるFIT賦課金の増高や、電力系統線の整備にかかるコスト増で、電力料金がさらに高騰しかねない。気候変動対策においてはドイツは牽引力となるだろうが、これまでのようにEU経済の牽引役が務まらない可能性が大きい。

 イギリスが抜けたEUは、メルケル氏が抜けたドイツに期待することは難しく、かと言って現在のフランスやオランダ、イタリアなどに盟主を期待することも出来ず、しばらく漂流するのではないかという見方は、決して悲観的過ぎるものではないと思う。

[ 2021.11.29 ]