再スタートした岸田内閣は「成長と分配の好循環」、とりわけ分配の充実に舵を切り始めている。まずは公明党がこの度の選挙で公約としてきた「18歳以下の子どもに10万円の未来応援給付金」を自民党としても受け入れ、今年の予備費からまず5万円を支給し、今後の補正予算から5万円クーポン券の発行を合意した。
ただしバラマキとの批判を避けるため、年収960万円以下の世帯を対象とした。子どもを持つ世帯の9割程度が対象となり、公明党も折り合ってくれた。なお迅速な給付を行うため、現行の児童手当制度を活用するという。
今後は補正予算の中で対応するが、看護士、介護士、保育士などの公定価格で決められた給与を増額することだ。この点は岸田総理自身が総裁選挙で述べてきたことだ。看護士を除いて、民間企業の平均給与よりも5、6万円安く設定され、ただでさえもきつい仕事のため、慢性的に人手不足に陥っている。この事態を解消して、給与の底上げを図る算段だが、今後継続的に給与を維持していくためには、それぞれの制度の根本的な見直しが迫られている。
自民党が選挙公約としてきた生活困窮者への支援、具体的には非課税世帯や困窮する大学生に10万円を支給するアイデアも、今後補正予算編成の中で前向きに検討されるだろう。また給与を一定以上に引き上げた企業や、非正規雇用から正規雇用に転換した企業に対する優遇税制も今後制度設計に入る予定だ。大企業の労使交渉において、総理が直接賃上げを求めることもアイデアとして浮上している。
以上のような政策により、コロナ禍などにより生活に困窮する個人を救済するとともに、分配の底上げを目指そうとしているが、過去の給付で問題となった手続きの煩雑さや遅延を防がなければならない。またバラマキに対する国民の目も厳しくなってきているので、真に救済が必要としているところに確実に支援が届くよう、適切な制度設計が求められている。