COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が、イギリスのグラスゴーで10月31日から開催された。そのリーダーズセッションに、衆院選を終えたばかりの岸田総理が出席して演説した。しかし石炭火力発電停止への踏み込みの甘さから、「化石賞」という不名誉な賞を、環境NGOのCAN(気候行動ネットワーク)から与えられてしまった。
岸田総理が強調したかったのは、安価な石炭火力に頼らざるを得ない東南アジア諸国に対して、より効率が良く、よりCO2を出さない技術を提供して、温暖化防止に貢献したいということだったが、石炭火力発電ゼロを目指すCANにとっては、眼中になかったようだ。かように日本は外交面でも生真面目すぎ、実現不可能なことは決して言及しない、つまりハッタリを使わないために損している面がある。それが日本に対する外からの信頼の元でもあるのだが。
菅政権下ではCO2排出量を、2030年に2013年に比して46%、2050年に実質ゼロ(カーボンニュートラル)を言明している。しかし今回のCOP26では、具体的なシナリオの提示や実現時期の前倒しが要求される気配であり、先進国から途上国への資金援助も求められている。
また今後の温暖化については、各国の取り組みを最大限実施しても、産業革命以来1.5°Cの平均気温上昇に抑えるのは難しく、2.0°Cに近くなるとの予測が示された。「この10年が勝負である」とバイデン大統領が述べれば、グテレス国連事務総長は「毎年が勝負だ」とボルテージを挙げる始末である。
一方、これまで企業のCO2排出算定基準が国によりバラつきがあったが、今回のCOPでは新たに統一基準が作られることとなった。温暖化防止の取組にとっては朗報だが、ESG投資の基準がより厳格になったり、新たな企業選別につながることも懸念される。企業活動の足枷になる可能性はあるが、このくらいの意気込みで対策を進めないと、目標達成は難しいと覚悟を決めなければならないだろう。