衆議院は10月14日解散され、いよいよ総選挙に突入する。岸田新総理の誕生からわずか11日目の解散は、極めて異例のスピードである。投票日も予想していたより1週間早く、超短期決戦の様相で、我が陣営も慌ただしく準備している。
岸田総理は自民党総裁選の時から「成長なくして分配なし、しかし分配なくして次の成長なし」と、成長と分配の好循環を目指すと主張してきた。当初マスコミなどでは「分配」に重点を移すのではないかと憶測が拡がったが、その後の総理の発言は「まず成長ありきだ。」と説明し、誤った憶測を是正した。
成長するためにはまず、科学技術イノベーションを盛んにすることである。日本はこれまでイノベーションを急ぐあまり、ターゲット戦略ばかり追い求めてきた。一時的には成果は挙がるものの、すぐ息切れしてしまう。息の長いイノベーションを求めようとすれば、基礎研究にこそ力を注ぐべきである。私はこの考えのもと、これまで若手研究者支援を続けてきた。
次に中小企業、サービス産業の生産性を上げることである。デジタル技術をこれらの分野に装備することや、不採算部門から成長部門への労働移動をスムーズに行えるシステムにすることが肝要だ。アベノミクスの3本目の矢である成長戦略に当たる部分であり、これが不十分であったのは残念だ。
一方、分配を充実する手段としては、目先のコロナ対策で支援金や給付金を配る方法もある。しかしこれは一時的な方法に過ぎない。継続して分配を充実させるには、給与を一定程度アップした企業に対する税の優遇措置や、公定価格である看護師や介護士、保育士などの給与を民間企業並みに引き上げること、非正規雇用から正規雇用への転換など、構造改革を伴うムーブメントにならなければならない。岸田内閣には構造改革の覚悟を持って取り組んでもらいたい。