昨年1月以来全世界に瞬く間に拡がった新型コロナウイルス、我が国でも第5波のピークがようやく過ぎ去ろうとしている。当初はせいぜい第3波で打ち止めだろうと推測していたが、波が訪れるたびに感染者数のピークが高くなってしまった。ワクチン接種を必死で進め、ようやく欧米並みの接種率に届こうという昨今だが、収束までにはなお時間を要するようだ。
こうした中、変異したデルタ株が主流となり、これまで感染や重症化が少なかった若年層に、猛威を振るうようになった。ワクチンは当面12歳以上と決めているので、小学校6年生からその対象となる。国も各自治体も今後は若年層に接種の重点を移し、とりわけ中学高校の受験生を急ぐこととなった。
私が運営する学校でも教員の8〜9割は既に2回接種を完了しているが、中高校生は1回目摂取が3〜4割程度にとどまっている。この割合が今後急速に増えることを願っている。2学期が始まって3週間経ったが、未だに対面授業とオンライン授業を交互に繰り返す状況だ。ハイブリッドと言えば聞こえは良いが、生徒はもちろん、教員の負担は相当な重さになっている。
私の学校では昨年春の一斉休校の際、手探りでオンライン授業を始めた。その経験もあり今回のオンライン授業では、かなり充実した内容になったと思っている。また授業ライブラリーに貯めておいて、あとで振り返りが出来るようになっている。しかしやはり学力の定着率は対面授業には遠く及ばない。この年代の子どもたちの学力低下が心配される。
加えてこの年代の子どもたちは、運動会や修学旅行を経験できず、夏休みも短縮されている。今年3月の卒業アルバム制作では、学校での思い出の写真がとても少なく、愕然とした思いをした。来年3月にも同じ思いをしないように、感染防止を徹底しつつ、学校を動かさなければならない。
さらに子どもたちにも基本的に、校内でのマスク着用を義務付けているので、先生と生徒、生徒同士が表情を把握してコミュニケーションをすることができず、感情を表現する機会が少なくなってしまった。大人でもマスク着用の負担は大きいが、成長期や多感な時期にマスクで顔半分を隠してしまうのは、人間形成にとって深刻な影響を与えかねない。
私はかつてこの年代を「コロナ世代と呼ばせない」と書いたことがあるが、予想以上にコロナ禍が長引いている昨今、後世において「コロナ世代」と呼ばれてしまうのではと、危惧している。コロナの影響はもちろん社会の隅々まで及んでいるが、特にコロナ禍の中で育った子どもたちには、今後社会全体で注意深くケアしていく必要があるのではないか。