近年GAFAのような巨大デジタル・プラットフォーマー(以下デジプラと略す)を介したネット取引は、新型コロナ感染症蔓延の影響により急速に拡大している。これに連れて消費者トラブルも、以前より2割から3割増加している。もともとネットの操作に慣れないユーザーが誤って購入手続きをしてしまう、いつのまにか定期購入になっていた、期待していた品物とは違うものが届いた、クーリングダウン期間にもかかわらず業者側が応じないなど、さまざまなトラブルが生じている。
これらの事態に対して、昨年はデジプラの圧倒的な力で出店業者が不利益を被らないよう、「透明化法」を成立・施行させたが、今国会ではネット介在の取引におけるデジプラの役割を明確化する法案を提出・審議している。具体的には消費者被害を防止しトラブルを円滑に解決するために、トラブルの際の事業者の情報開示に努力義務をデジプラに課すことなど、トラブル解決に向けて一定の役割を果たすことを明記した。GAFA側がよく口にする「ただの場所貸しで、トラブル当事者ではない」と言った逃げは許されなくなる。この法案は当面、事業者対消費者(B to C)の場合に限定されるが、メルカリやネットオークションなど消費者対消費者(C to C)のケースやネットオークションなどにおけるデジプラの役割強化は、今後の課題として準備して行きたい。
さらにネット取引の際の個人情報がデジプラ側に蓄積され、個人の好みに合わせた商品を売りつけようとする、いわゆる「ターゲッティング広告」によって必要以上のものを買わされるケース。またかレストラン利用者が答えたアンケート結果により、ランキングが勝手に公表され、低位の店が被害を受けると言った「レビュー」のケースも営業に悪影響を与えることが少なくなく、これらにも一定のルールを作るべきではないか。
デジプラのもう一つの分野はSNSである。トランプ前大統領はツイッターでフェイクニュースを流し続けた。バイデン当選決定を認め難いとして、支持者らに「国会議事堂に行こう」とツイッターで呼びかけたところ、襲撃を先導したと受け止められ、暴徒が議事堂に乱入した。一方香港やミャンマーでは、SNSの呼びかけによって民主デモが勢いを増す結果となった。
かつては「自由な言論市場において淘汰される」という理想が通用していたが、デジプラのバーチャル空間においてはそのメカニズムが上手く働かなるケースが増えて来たのではないだろうか。「言論における国家からの自由」は最も大切だが、一方で「国家による言論の自由」も保証されなければならないのではないか。
「国家による自由」といってもやり方によっては言論統制につながる恐れがあり、余程注意が必要である。具体的にはフェイクニュースかも知れない記事が搭載された時は、他の情報や考え方も参照するようにアラームをつけることなどが考えられる。しかし所詮は学校教育の中で、様々な意見を冷静に比較する癖を付けることが大切ではないだろうか。