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緊急事態宣言下での私権制限について

 11都府県にコロナ感染の緊急事態宣言が発令されてから3週間が経とうとしている。新規感染者数の推移を見ると一時の勢いは無くなって来たが、病床の専有率などはまだ高水準で推移しており、2月7日までの期限も延長される可能性が高い。

 そうした中、飲食店などの営業時短要請にしたがわなかったり、入院や疫学調査に協力しない人々に対して、より強い権限で対応することで、感染拡大を確実に防止したいという知事会や医師会などからの要望により、この度、新型コロナ特別措置法改正案と感染症法改正案が国会に提出された。

 同改正原案では、緊急事態宣言下において、営業時間短縮命令を拒んだ事業者への過料を、宣言下では50万円、「まん延防止等重点措置」下では30万円徴収すること。また感染症法改正案では、入院拒否者への刑事罰(1年以下の懲役か100万円以下の罰金)を課し、保健所が行う疫学調査拒否者への刑事罰(50万円以下の罰金)を課すこととした。

 この政府原案に対して与野党の間では、罰則が重すぎるのではないかとの議論があり、与野党の話し合いによって修正が行われた。時短命令拒否者には宣言下で30万円、重点措置下で20万、入院拒否者には刑事罰を行政罰に変更して50万円の過料、疫学調査非協力者にも刑事罰を行政罰に変更して30万円の過料を科すこととした。この法案は来週半ばまでには成立し、10日後に施行される。

 これらの法案は一定の条件のもと私権制限を伴うものであるため、出来るだけ多くの政党の賛同や意見を取り入れることが大切である。修正協議によりそういう方向になりつつあるのは評価に値することではないだろうか。

 2004年に公布された「国民保護法」では、住民の避難・救援に必要な場合、一定の範囲で私権を制限すること(例えば、私有地の一時的な提供、医薬品や食料の保管指示、交通規制などに従わなかった場合などに罰則が科される)が規定された。憲法改正における緊急事態条項の議論でも、私権制限のあり方について様々な議論が展開された。

 私権制限に関する議論におけるポイントは、大きく2つあると思う。まず最大限尊重されるべき私権を制限するからには、確実な補償が伴わなければならないこと。もう一つは、制限される期間は緊急事態の場合のみであり、宣言が解除された場合は速やかに元に戻さねばならぬことである。これはワイマール憲法下の戦前ドイツにおいて、国家非常事態宣言を出し続けた中で、合法的にナチスが独裁体制を作り上げてしまったという教訓から学んだことである。

[ 2021.02.01 ]