アメリカやヨーロッパでは新型コロナウィルス感染症の第三波が到来し、さらに猛威を振るっている。感染者累計は6000万人を超え、死者数も140万人に達した。我が国でも第一派を超える新規感染者数を連日更新しているが、一方でPCR検査数が増えており、これも増加の一因かも知れない。しかし重症者も確実に増えているため、国内の感染拡大傾向は明らかである。
一方で菅官房長官以来の肝いり政策である「GOTOキャンペーン」が、9月以降活況を見せてきた。政府はGOTO由来の感染者は全国で200名弱と発表したが、感染防止に対する国民の意識に隙を与えることになりかねず、ブレーキを踏まざるを得なくなった。当初は都道府県に判断を丸投げしたが、分科会の批判も受けて国としての判断を出すようになった。仮に総理の肝いり政策のためブレーキを躊躇したのだとしたら、それは許されるべきではないだろう。
また感染拡大道府県では警戒ステージ3に近い状況にあり、ある県がステージ3を宣言したいと国に掛け合ったところ、「1県だけが抜け駆けすることは容認できない」という反応だったという。GOTOキャンペーンの継続・不継続の判断で都道府県の意向を尊重すると言っておきながら、警戒ステージの格上げにおいてそれを認めないというのは、政策に一貫性を欠いているのではないか。
コロナ感染症の拡大が始まって9ヶ月、国民の間にはコロナ疲れやコロナ慣れが蔓延しているといっても言い過ぎではない。また生活のため背に腹は代えられないとして、自粛や規制に従うことを躊躇する気持ちも分からないではない。私は仕事柄、どうしても新幹線に乗らざるを得ないが、かつてはガラガラに空いていたし、乗っている乗客もても密やかだった。ところが最近は混み合い始め、しかもマスクを外し、仲間と大声で話す光景が増えた。飲食店でも密になって、談笑する若者をしばしば見かけることが多くなった。
第一波が襲来した4月、5月頃は、皆がとても緊張していたはずだ。タレントの志村けんさんや岡江久美子さんがコロナ禍で亡くなり、その怖さを国民が共有出来るよう、警鐘を鳴らしてくれたのかも知れない。しかし今は遠い昔のように感じてしまっている。国には迅速で一貫性のある感染対策を求めると同時に、我々はもう一度あの頃の恐怖感を思い出し、気持ちを引き締め直す必要があるはずだ。