昨今は教育関係者の間で、小中学校の1クラスの人数を現在の法定上限40人から、35人さらには30人に引き下げるべきとの意見が盛んになって来た。「上限40人」という意味は、41人のクラスになったら必ず21人と20人の2クラスに分けなければならないことを指す。
この結果として現在の1クラスの全国平均人数は中学校が34.3人、小学校が28.8人となっている。また現在は小学校1年生にのみ35人学級が導入されたが、財政難を理由として小学校2年生より上への学年進行が止まってしまっている。一方35人学級を実現するには8600億円から1兆円の追加人件費がかかると試算されている。
確かに昨今の学校現場では、これまでのいじめや不登校に加えて、発達障害やADHD(注意欠陥多動症)、アスペルガー症候群など多様な障害やアレルギーを持った子供たちが増えており、きめ細かな指導を必要とするために教員の負担が大きくなっている。これに加えてコロナ感染防止のため、1クラスの人数を減らすべきとの声が益々高まっている。
しかし少人数学級の導入が顕著な教育効果を上げているかというと、残念ながら未だに明確なエビデンスは示されていない。教育現場からはむしろ少人数にするよりも、養護教諭、司書教諭、栄養教諭、ティームティーチングのための教諭、スクールカウンセラーなど、教育環境をサポートする多様な人材を配置する、いわゆる「加配」を幅広く実施することの方が効果的ではないかとの意見も多く寄せられている。
公立学校の1クラスの人数を決めているのは、昭和33年に施行された「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律」という仰々しい名前の法律である。これにより戦後のベビーブームで子供たちが学校に溢れかえっていた状況を是正するために、全国一律に一つの例外もなく、1クラスの人数上限を抑え込もうとしたのである。
1クラス60人とか70人といったあの時代の教室の混乱を是正するには、このような力ずくの法律が必要だったが、今は少子化によりその役割は薄れている。また40人だったら教育ができるが、41人だったら出来ないという理屈は成り立たない。教え方のうまい先生だったら、40人だろうと50人だろうと、クラスは活性化するはずだ。クラス編成は地域により教員の能力により、もっと多様化すべきだし、柔軟にすべきではないかと考えている。