はじめのマイオピニオン - my opinion -
船田はじめが毎週月曜日に提言するメールマガジン。購読ご希望の方は下記フォームからお願いします。
お名前
メールアドレス
    配信停止申込
分断と混沌の米大統領選

 11月3日の米大統領選を控え、9月29日には恒例のテレビ討論会が行われた。投票日までにあと2回開催されるが、過去においては劣勢だったケネディ氏が若さと冷静さをアピールして、熟練のニクソン氏よりも高評価を受け、それがケネディ氏の勝利に繋がったとも言われる。それだけにテレビ討論会は、全米はもちろん世界からも注目されている政治ショウである。

 超大国であり世界を動かす力を持つ米大統領を選ぶプロセスなのだから、今後の世界をどのようにマネジメントしていくのか、大所高所からの白熱した議論を期待していた。しかしお互いの政策の欠点ををあげつらって批判し、お互いのスキャンダルを暴くという、全く期待外れの展開にがっかりしたのは私だけではあるまい。特にトランプ大統領はバイデン元副大統領の話の最中に割って入り、しばしば司会者に注意を受ける始末。バイデン候補は冷静に有権者に語りかけて一定の評価を受けたが、「売り言葉に買い言葉」というようにトランプのペースに巻き込まれ、冷静さを失う場面もあった。

 今回の泥仕合はトランプ大統領の個人的なキャラクターによる部分が大きいが、アメリカ社会の現況の反映といっても過言ではない。一つは新型コロナウイルス感染拡大による混乱、もう一つは顕著になったアメリカ社会の分断現象である。

 全米でのコロナ感染者数は700万人を超え、死亡者数も10万人に達しようとしている。未だに収束の兆しが見えない中、トランプ大統領はとにかく経済を動かしたいとし、バイデン候補は感染を抑えることを第一に考える。これらはどの国でも二律背反の課題であり、どちらかに軍配を上げるものではないが、両者の言い争いは医療や経済の現場を混乱に陥れるばかりである。

 アメリカ社会の分断については今に始まったことではないが、トランプ政権下の経済政策や税制改革は、賃金や所得の格差を一層拡大して来た。また彼の支持層であるラストベルトなどのプアーホワイトや福音派の厳格な人々を満足させるため、厳しい難民政策や黒人犯罪に対する厳罰化を「法の支配」と言う言葉でカモフラージュして来た。

 一方のバイデン候補は極左に与することはないものの、人権重視や人種差別排斥、平等政策を好む中道左派を満足させる戦略を取ろうとしている。両者はそれぞれの固い支持者をまとめるため、極端な政策を打ち出し、さらに中間層の支持を拡大する点で共通している。選挙戦略的には間違っていないが、この戦略がエスカレートすれば、アメリカ社会の分断を助長することになりかねない。

 ここにきてトランプ大統領がコロナウイルスに感染したというビッグニュースが飛び込み、討論の先行きは不透明となったが、2回目、3回目が実施されるなら、前回のテレビ討論の反省を踏まえ、相手の話を遮らないルールを作るなど改善するそうだ。この措置によりもう少し冷静で大所高所からの議論を期待したい。対中国政策をどうするのか?同盟国との絆をどのように強化するのか?自由貿易を守るのかどうか?地球温暖化防止のためパリ協定に復帰するのかどうか?全米の有権者のみならず我々も大いに知りたいところである。

[ 2020.10.05 ]