7月24日は当初の予定なら、東京オリンピックの開会式が挙行され、各競技が華やかに始まっている頃だ。しかし世界的なコロナウイルスの流行により、この3月には、オリンピック・パラリンピックの1年延期が発表された。我々はこれを聞いて落胆したが、出場するアスリートたちの気持ちの落ち込みは計り知れない。
過去においてオリンピックの中止や不参加の事態もあった。1916年のベルリン大会は第一次世界大戦で中止、1940年の東京大会は日中戦争で中止、1944年のロンドン大会は第二次世界大戦で中止。また1980年のモスクワ大会は、ソ連のアフガニスタン侵攻で西側諸国が不参加、1984年のロサンゼルス大会はその意趣返しで東側諸国が不参加だった。これまでは全て戦争や紛争のために中止だったが、今回は初めて感染症の蔓延によるもので、延期も初めてだ。
コロナウイルスの感染状況は、日本でも世界でも一時収まるかに見えたが、第二波と思われる拡大局面を迎えている。仮に日本が先行して収束しても、世界各国が収まらないと開催はできない。感染防止の切り札であるワクチン開発が待望されているが、果たしてオリンピックまでに間に合うかどうか、ギリギリの状況ではないだろうか。
先日は久しぶりのIOC総会がリモートで行われた。あくまで来年7月を目指すが、その際には規模の縮小や、観客を減らす必要性などが話し合われた。半世紀ぶりのオリンピックを迎える訳だから、出来ればフルサイズで行って欲しいが、どのような形でも開催できるのであれば、一定の変更はやむを得ないと思う。
あらゆる競技はアスリートのためにあるが、特にオリンピック・パラリンピックはアスリート・ファーストでなければならない。人類最大のビッグイベントだからこそ、多くのアスリートたちが人生を賭けて、命を賭けて競い合っている。4年に一度のチャンスがあるかないかによって、人生が狂うってしまうかも知れない。どんな形でもオリンピックは開かれるべきだし、練習環境を確保するためにも、ハイパフォーマンスセンターやナショナルトレーニングセンターを、出来る限り利用可能な状況にしておいて欲しい。