新型コロナウイルス感染症のために、収入の減った企業や個人の事業継続を目指して、総額2兆3000億円強の「持続化給付金」を政府の第一次補正予算に計上し、現在その執行にあたっている。今年のある月の事業収入が、昨年同月のそれより50%以上減少した中小企業に上限200万、個人の事業主に上限100万まで支給するが、その作業が遅れがちでご迷惑をおかけしている。民間に委託することにより給付作業の迅速化を図ることを目指したのだが、そうなっていないことは大変残念である。改善を強く促したい。
しかしそれ以上に国会やマスコミで問題視されているのは、当初この給付金の審査と給付の業務が、民間組織「サービスデザイン推進協議会」に769億円で委託されたのち、すぐに電通に749億円で再委託されていたことである。ほとんど丸投げされていたのではないかとか、差額の20億円が中抜きされたのではないかと疑念が持たれている。後日、20億円の大半は振込手数料や人件費などと説明されたが、全体の流れやなぜそうしたかの説明がまだまだ不十分ではないだろうか。
確かに行政からの民間委託には、時として再委託というケースもありうる。それは本体業務を窓口業務の煩雑さから切り離さなければならなかったり、より専門化した部署に一部委託するような場合である。しかし今回の事例は、ほとんど丸投げと言っても過言ではなく、本来ならば電通が直接委託されるべきであり、協議会を間に噛ませる必然性が乏しいのではないか。
委託を受けた民間組織が、再委託や再々委託されるという手法は過去にも例があるというが、これが常態化し何のチェックも受けないとなっては非常に困るのである。平成18年8月には谷垣財務大臣が「公共調達の適正化について」という通達を各役所に発出したが、一括再委託の禁止や再委託にあたっては厳しいチェックをすることを要請している。それが最近はほとんど守られていないのが実情だ。
行政の仕事の一部を民間に委託して、より迅速に執行していくことはありうる手法であり、適正に行われれば望ましいことである。しかし一括再委託や必然性のない再委託が横行することは、税金の無駄遣いであり、行政の信頼を損なう所業である。政府はもう一度財務大臣の通達に立ち戻って襟を正すべきである。