政府や自治体からの度重なる外出自粛や休業要請などにより、人の集まりや移動が抑制され、新規感染者数もやや鈍化してきているとの見方が、政府の専門家会議で話し合われた。確かに大都市の中心部では人手が以前の8割から9割減少したものの、大都市周辺の商店街や地方都市では、5、6割の減少率にとどまり、場所によっては逆に増えてしまったところもある。
政府は引き続き人と人の接触を7割以上、出来れば8割減らす努力を国民に再度呼びかけている。7割だとほぼ終息に至る期間が約2ヶ月なのに対して、8割だとそれが約1ヶ月に短縮される。経済の立ち直りを考えれば、終息までの期間が短ければ短いほど良いに決まっている。ここが正念場と心得て、国民皆が一層の努力をしなければならない。
確かにこのコロナ禍は世界にとっても日本にとっても最大のピンチである。しかしこれを逆手にとって、チャンスに変えることも出来るのではないか。会社に出社しなくても在宅で出来るテレワーク、病院に出向かなくてもかかりつけ医の問診が受けられる遠隔診療、学校が休みでも学びができるオンライン授業などが、急速に私たちの生活に入り込もうとしている。いわゆる「行動変容」が起こりつつあると言っても良い。
これらの活動はこれまで規制がかかっていたり、ネット環境の不備などで本腰を入れた取り組みにはなっていなかった。今回は新型コロナウイルス対策のため、急ごしらえで取り組みはじめたのである。これを一過性のものとしないで、業務の効率化や、きめ細かなカスタマイズを推進するきっかけにしたいものだ。
しかしこの行動変容は、人と人が直接会う機会が少なくなることでもある。人と人が直接会い、コミュニケーションをとることによって、相互理解が生まれ、新しいアイデアや文化が生まれる。教育では特に、集団で物事を成し遂げる経験がとても大切である。近い将来コロナ禍が過ぎ去った後、我々はオンラインを活用し効率化した業務を進めると同時に、意識して人と人が会うこと、集団で物事を達成することを、メリハリをつけて実行すべきではないだろうか。これにより人間の生活はより豊かになるはずである。