いま医療界では2025年を目指して、地域包括ケアシステムの構築を鋭意進めている。医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護士、柔整師、理学療法士、ケアマネージャーなどがネットワークを組み、「誰ひとり取り残さない」とのコンセプトのもと、地域の人々の医療や福祉へのアクセスを改善することを目指している。
またもう一つの動きは生活習慣病などの、いわゆる「生物学的要因」による疾病を予防して、平均寿命の延伸以上に健康寿命の延伸を目指すことであるが、さらに最近の医療界では、生物学的要因だけでなく、健康における「社会的決定要因」(Social Determinants of Health;SDH)を重視して、健全な長寿社会を目指そうとする動きがある。
SDHとは、貧困などの社会的格差、ストレスフルな組織、発育期の愛情の不足、長時間労働、有害な加工食品の摂取、車社会における運動不足など多岐にわたっている。これらの原因が複雑に絡み合って疾病を引き起こしたり、症状を悪化させるという考え方である。
原因を取り除くため、国民皆保険の維持、組織や慣習の見直し、働き方改革、公共交通手段の活用など、社会構造や社会のあり方を変えていくという積極的な活動が、医療界を中心に始まろうとしており、政治や行政は今後これに応えていかなければならない。