未曾有の犠牲をもたらした東日本大震災から8年が経過しようとしている。これまでの政府や自治体の取り組みにより、高台移転や防潮堤の建設、地場産業や生活環境の復興など、目に見えるプラスの動きもある。一方未だに多くの被災者が仮設住宅や避難先での不自由な生活を続け、メルトダウンを起こした原子炉からの放射能拡散は辛うじて防げているが、増え続ける汚染水処理の目処は立っていない。溶融燃料の取り出し技術は確立出来ておらず、風評被害に苦しむ地域も少なくない。
そうした中、先日はNHK総合テレビで『黒い津波~知られざる実像』という番組を観た。震災後訪れた気仙沼のお寺の住職から「あの時の津波は海水のいつもの色ではなく、どす黒い波だった」と聞かされていたので、やはりそうかと合点がいった。番組の分析によれば、津波のパワーは海水そのものを海底から動かすため、長年沈殿したヘドロを巻き上げて混ぜてしまうという。そして細かい粒子が混ざった津波は、普通の海水よりも1.3倍から1.5倍の威力を持って建物や人間をなぎ倒してしまったという。
あれから8年も経つのに、なぜ今この事実を初めて聞くことになったのか、いささか不思議に感じたが、落ち着いて原因解明するまでにこれだけ時間がかかるほど、この度の災害が常識を超えた大きさであったことの証左ではなかろうか。
最近政府の地震調査委員会が、日本列島の大地震の将来予測を発表した。南海トラフ周辺の巨大地震が30年以内に発生する確率が80%と高い数字を示していることは、想像の範囲内だろう。しかしついこの間巨大地震に見舞われた東北地方の東方沖の一部でも、30%を超える高い数字を示したことは驚きである。東日本大震災でも動かなかったプレートに歪みが溜まっているかららしい。「天災は忘れた頃にやって来る」との格言は「忘れないうちに次々とやって来る」に変えるべきかも知れない。
東日本大震災の集中復興期間があと2年で終了する。これまでフル稼働して来た復興庁も一旦閉じこととなるが、まだまだ復興は十分ではなくさらに時間のかかる仕事である。政府は内閣府にある防災担当部署と合わせて、省庁横断的な復興の司令塔を模索している。このアイデアは復興庁が経験したり開発して来たノウハウを、防災の分野に生かすという点で意義あることと思う。ただし実力ある組織でなければならないことは言うまでもない。