2012年から始まり、現在も続いている景気拡大局面は、戦後最長と言われた2002年から08年の「いざなみ景気」を超えたかもしれない。しかし国民の間でその実感が乏しいのは、年間の平均GDP成長率が1.3%と低調なことも影響している。「いざなみ景気」は2%程度、1986年から91年の「バブル景気」は5.4%、1965年から70年の「いざなぎ景気」は実に11.4%だったのと比較して、やはり見劣りがする成長率である。
なぜこのように景気が拡大しても成長率が低いのか、いくつかの要因が考えられる。日本経済がより成熟度を増していること、少子高齢化による人口構造の変化、新商品の開発などイノベーションが起こりにくくなったこと、人口減少の影響が出始めていることなどが良く指摘される。
しかしもう1つ重要な要因はモノやサービスがリアルの世界で動く時代から、バーチャルの世界で動く時代になろうとしているにも拘らず、これらをGDPの計算に取り込んでいないからではないだろうか。さらに言えば、人間のあらゆる行動の情報がデータ化されている現状において、このビッグデータに経済的価値が与えられていないのではないかということだ。
ビッグデータはそれが正しい方向に利用されることにより、新しい仕事やサービスを生む源泉である。したがってまともな財産としてカウントしてしかるべきである。しかるにデータはGAFAと呼ばれる巨大なプラットフオーマーに偏在していることも否めない。個人のデータがどこでどのように利用され、流用されているかも明らかではない。EUが個人情報の保護に厳しい対応を取ろうとしているのは、むしろ当然の行動である。
このようにビッグデータの管理と利活用においては、なお整備すべき制度や課題は多い。しかしそのものが持つ価値をきちんと評価することも、忘れてはならない課題である。