はじめのマイオピニオン - my opinion -
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民主主義を正しく機能させるには

 先の通常国会終盤、参議院議員定数を6増する公職選挙法改正案が突然提出された。一票の格差を3倍以内に留めることと、合区により選出されない県から議員を出すことが狙いである。合区解消のための憲法改正案は自民党として準備したものの、審議すら行われず忸怩たる思いである。しかし消費税アップを来年秋に控え、自ら身を切るどころか党利党略と受け止められる法案には、どうしても賛成出来なかった。
 選挙制度は言うまでもなく民主主義の根幹に関わる。したがってその改正には出来る限り多くの政党が賛成することが望ましい。かつて私が座長を務めた選挙権年齢の引き下げにおいては、多党間で粘り強い交渉の末、ほぼ全会一致で可決出来た。もちろん、いつもこう上手く行くとは限らないが、今回の改正においては野党との交渉も不十分のまま、与党が押し切ったことは民主主義のルールに馴染まない。

 ところで、第二次安倍政権が発足してから6年近くが経過したが、経済運営や外交において一定の成果が得られた。安倍総理のリーダーシップや官邸主導というファクターで政治が動いて来たことは評価すべきである。しかし一方で党内でものが言いにくい、党内民主主義がどんどん萎んでしまったこともまた事実である。小選挙区制度により党中央の力が強まる傾向があり、官邸の責任だけに帰せられないが、民主主義はとても壊れやすく、常にケアが必要なことを、総理周辺や官邸は心がけるべきである。

 海外に目を転じると、民主主義の先進国とも言える欧米各国でポピュリズムが蔓延し、右派勢力が台頭している。特にヨーロッパでは難民の受け入れに不安や嫌気を感じる国民の多くが、時の政権を信頼出来なくなり、新しい勢力に宗旨替えする傾向が見られる。さらにこの動きを増幅する要因として、SNSの普及を背景としたフェイクニュースなどの動向がある。誤った情報を意図的に流布させ、世論をいとも簡単に曲げてしまうことも可能だ。まさに民主主義の危機が目前に迫っていると言っても過言ではない。

 民主主義は手間と時間のかかる装置である。しかしこの装置のお陰で、深刻な対立やファシズムの台頭を防いでくれる。民主主義を正しく機能させるためには、正しい情報を国民が入手できる環境が必要である。また受け売りや大衆迎合ではなく、世の中のあらゆる現象に対して自分自身の考えをきちんと持つこと、自分の頭で考えることが重要である。選挙権年齢の18歳への引き下げに際して、高校生などの若年者に対する主権者教育の重要性が叫ばれる昨今だが、大人のためのそれもまた、極めて重要な時代になった。

[ 2018.08.27 ]