はじめのマイオピニオン - my opinion -
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日本経済のお目付役不在?

 今年も残すところあと僅かとなったが、日本経済も20年来のデフレ状況を脱し、企業収益の改善や株価の上昇が続き、バブル崩壊以前の水準に近づいている。この要因の一つは言うまでもなく、安倍第二次政権の目玉政策アベノミクスである。「異次元」と呼ばれた金融緩和や超低金利、マイナス金利政策が、経済の足腰を強くしたことは間違いない。そこにアメリカや中国の景気好調という外的要因が加わったことは、大変ラッキーなタイミングだった。

 しかしその一方、2020年のプライマリーバランス達成目標が、度重なる消費税アップ延期や、赤字国債発行削減に向ける財源の一部が、教育無償化に流用されるなどで、先延ばしの様相を呈している。今後は10年先、20年先を見越した財政健全化計画をしっかり国民に示して、財政運営の信認を内外から取り付けておく必要がある。金融緩和政策の出口も、景気動向に細心の注意を払いつつも、そろそろ探っていく時期を迎えている。

 このような冷静で先を見据えた経済政策を提言し実行していくには、目の前の現象に追われる官邸の影響を受けず、官邸から十分離れた場所に、権威ある経済政策立案組織を置いておくべきではないだろうか。かつての日銀は「中央銀行」としての矜持を持ち、時の政府に意見を述べるケースが多々あったはずだ。しかし日銀法の改正以後は、その独立性が徐々に失われ、黒田東彦総裁が任命されたのちは、官邸との距離を急速に縮めてしまった。

 また私がかつて担当大臣を務めた経済企画庁も、世界経済の動向や不安定要因の分析・評価 、国民経済の末端からのフィードバック、中央と地方経済の乖離 の実態などを精緻に分析し、官邸に遠慮なくものが言える存在であったはずだ。ところが経済財政諮問会議に改編されたのちは、これまた官邸との距離を縮めてしまった。

 数年前に「消滅自治体」というショッキングな言葉で論文を発表し、地方創生への取り組みを促すこととなった日本創成会議も、うまく育っていけば経済政策のお目付役になれたかも知れない。しかしあまりにも組織的に脆弱であったため、継続的・包括的に影響力を発揮することは叶わなかった。

 経済運営がうまく行っているときは、そのような組織は不要かも知れない。しかし経済が潮目を迎えて、政策転換を迅速・適切に行う必要が生じたとき、あるいは中長期的に一つの政策を粘り強く継続しなければならないとき、時の政府から独立した組織は絶対に必要になる。しかもそれは一朝一夕には出来ない代物であるから、今のうちから準備しておかなければならないだろう。

[ 2017.12.25 ]