先日は総選挙後初めての衆議院憲法審査会が開かれた。テーマは選挙前の7月に欧州のイギリス、スウェーデン、イタリアでの調査報告だった。ご承知のようにイギリスではEU離脱か残留かが問われた国民投票、イタリアでは上院の権限縮小と、国と地方との関係見直しのための憲法改正国民投票が、それぞれ昨年6月と12月に実施された。その顛末を調査したということで、大変興味深い報告を受けた。
イギリスでもイタリアでも、国民投票の結果はいずれも否決だった。この結果キャメロン政権もレンツィ政権も交代せざるをえなかった。否決の理由は様々だったようだが、まずキャメロン首相は党内のEU離脱派を抑えるために、敢えて国民投票に打って出たのはいいが、政権を強化する目的にすり替わってしまい、政権批判票が離脱に流れてしまったという。また「残留」か「離脱」かという言葉の印象も影響し、消極的なイメージの残留よりも積極的なイメージの離脱を選ぶ有権者が多かったという。
次にイタリアの憲法改正では強い権限を持つ上院の力を制限することや、国と地方の関係見直しなど意欲的な内容であったにもかかわらず、これまたレンツィ政権の信任の色合いが濃くなってしまったこと。手続きの途中で改正に賛成していた一部野党がマスコミの反対キャンペーンに怖気付いて、反対に回ってしまったこと。さらには改正項目が数多くあるのに、一括して賛否を問う設問にしたために、国民が戸惑ってしまったことなどが指摘された。
これらの事例から得られる教訓は、まず憲法改正は本来政治的な事柄だが、出来るだけ政権から切り離して、議会において静かな環境のもとで議論する場を作らなければならないことだ。また小さいことかも知れないが、設問の内容を明確に区分して行い、公平・公正な言葉を使うことが重要だということだ。
さらには基本的に自由な国民投票運動のあり方について、メディアに一定の制限を加えるべきか、広報の費用についても制限を設けるべきかどうかなど、なお検討を続ける必要性を痛感した。何れにしても国民のための憲法改正、国民が民主主義の責任を果たすための憲法改正でなければならない。