はじめのマイオピニオン - my opinion -
船田はじめが毎週月曜日に提言するメールマガジン。購読ご希望の方は下記フォームからお願いします。
お名前
メールアドレス
    配信停止申込
またしてもヨーロッパのテロ

 昨年来ヨーロッパでは、凄惨なテロが続いている。パリでは昨年1月の雑誌社シャルリ・エブドの銃乱射、11月の劇場でのテロ、今年3月のブラッセル空港でのテロ、7月のニースでのトラックによるテロ、そして先日のベルリンでのトラックによるテロなどである。

 これらのテロは、ほとんどかイスラム国の犯行によるものだが、シリアのアサド政権と反政府勢力、そしてイスラム国の3者による複雑な対立がその背景にある。さらにアサド政権を支持するロシア、反政府勢力を支持する欧米諸国の代理戦争という構図が、事態をより深刻にしている。

 シリアの内戦はテロの続発を引き起こすだけではない。国外に脱出した400万人とも言われる難民を、主にヨーロッパ諸国が受け入れている。最大の受け入れ国はドイツであり、国民の不満が爆発寸前にある。そうした中でのベルリンでのテロは、メルケル政権に大きな打撃を与えかねない。「ドイツのための選択肢(AfD)」という民族派の政党が、来年秋の国政選挙で飛躍する可能性がある。

 一方、英国は6月の国民投票においてEU離脱を選択した。主な理由はやはり難民や移民の受け入れに嫌気を指したことだ。これまで結束を保ってきたEUの箍が外れる危険性が出てきた。フランスでは来年4月に大統領選挙が実施されるが、これもテロや難民の影響を受けることが予想される。中道右派のフィヨン氏に対して、極右勢力の国民戦線ルペン氏が優位に立つ可能性がある。

 このようにヨーロッパ各国では、政権が内向きに傾きつつあるが、トランプ次期大統領を迎えるアメリカも、同様に内向きを志向する。世界経済の停滞にとどまらず、紛争解決のインセンティブが損なわれることが懸念される。

 間もなく訪れる2017年の世界は、明らかに偏狭ナショナリズムとの闘いであり、どこまで国際協調主義を貫けるかが我々の使命ではないだろうか。

[ 2016.12.26 ]