去る12月15日から16日にかけて、安倍総理とロシアのプーチン大統領との間で、首脳会談が開催された。主な目的は、領土問題を解決して日ロ間で平和条約を締結すること、そして70年来の太平洋戦争の遺産を清算することである。
領土問題についてはこれまでにも数多くのアプローチあったが、皆挫折してきた経緯がある。4島一括返還から2島先行返還、共同統治まで様々な内容だった。これまでに何と16回も会ったという安倍総理とプーチン大統領との個人的信頼関係に基づき、その解決に一定の期待が高まった。
そこで日本側はまず、サハリンやシベリアにおける経済連携を強めて、3000億円超の経済協力パッケージをロシアに提示した。さらには北方領土そのものにおいて、「特別の制度」のもとでの共同経済活動を提案した。
この特別の制度というのは、ロシア・日本いずれの法的立場からも離れた、中立的な制度であり、かつての「共同統治」の考え方に似ている。しかしロシアは、あくまでロシアの制度の適用に固執して、必ずしも功を奏さなかった。日ロ関係改善の重要な一歩ではあるが、領土交渉にはなお大きな隔たりがある。
ロシアは昔からの大国である。我々とは違った時間の尺度を持っている。70年を遥かに超えるスパンで物事を考える人々だ。ソ連崩壊の時は別として、ロシアは一貫して領土を手放したことはない。粘り強い交渉が求められ、決して焦ってはいけない。何より喰い逃げされないことが肝心である。
また我々は刻々と変化する国際情勢を睨みながら、交渉を行う必要がある。アメリカの次期トランプ政権は、総じてロシアに好意的であり、ロシアにとっては日本と急いで交渉しなくても良くなりつつある。OPECによる原油原産の合意は、ロシアの石油開発に有利に働く。
日ロ関係改善は極めて根気のいる仕事であり、決してとどまらず、しかしながら焦らずに取り組まなければならない。